2010年 11月 17日
場の量子論の勉強、その3 |
1984年に大学院に入学した年の春に、関西の諸大学の素粒子論専攻の大学院生が週末に合宿して勉強をする会がありました。たしか、宝塚の山の中の施設だったので、電車を乗り継いで行きました。研究発表のほかに、先輩がいくつかの話題について講義をしてくださるようになっていて、そのための参考文献をあらかじめいただいていました。その時に電車の中で読んだのが、1971年にSidney Colemanさんがシシリア島のエリチェの夏の学校でなさった名講義の記録 "Dilatations" でした。
これは、くりこみ群の解説です。対称性とワード・高橋恒等式の話から始まって、スケール不変性があるとこれがどうなるか、しかしそれでは矛盾が起こる、ではその矛盾はどのように解消するのか、と探偵小説のようにわくわくする書きぶりで、合宿施設に着くまでに夢中で読み切ったことを憶えています。
Colemanさんは1966年から1979年の間に8回エリチェに行かれて講義をされました。どれも名講義ですが、特に、"Classical lumps and their quantum descendants," "The uses of instantons," "1/N" は、今読んでも勉強になります。
これらの講義録は1985年に"Aspects of Symmetry"と名付けられた本にまとめられています。
私も、数年前にエリチェに行きましたが、すばらしいところでした。エリチェは険しい山の上から地中海を見渡す中世の町で、夏の学校の校長をされているNino Zichichiさんは町の名士だそうです。講義は古い教会を改造した美しいホールで開かれますが、工事の時にZichichii家が400年前に寄付した壁画が出てきたのだそうです。講師や生徒には町の中のレストランのリストが渡されて、夏の学校の期間はどこに行ってもタダで食事ができるようになっていました。
場の量子論は、't HooftとVeltmanによるゲージ理論のくりこみ可能性の証明から、1984年の超弦理論革命までの十数年間に大きな進歩を遂げました。この期間の様子についてColemanさんは次のように書いています。
"This was a great time to be a high-energy theorist, the period of the famous triumph of quantum field theory. And what a triumph it was, in the old sense of the word: a glorious victory parade, full of wonderful things brought back from far places to make the spectator gasp with awe and laugh with joy."
私はこの時期が終わってから大学院生になり、この英雄時代を経験しなかったので、場の理論の教養にかけているものがあるのではないかと気になっていました。 (今でも、気になっています。) Colemanさんの講義録を読むことで、当時の様子を少しは追体験できたのではないかと思っています。
長くなってきたので、今回はここまでにします。続きは、また後日に。
これは、くりこみ群の解説です。対称性とワード・高橋恒等式の話から始まって、スケール不変性があるとこれがどうなるか、しかしそれでは矛盾が起こる、ではその矛盾はどのように解消するのか、と探偵小説のようにわくわくする書きぶりで、合宿施設に着くまでに夢中で読み切ったことを憶えています。
Colemanさんは1966年から1979年の間に8回エリチェに行かれて講義をされました。どれも名講義ですが、特に、"Classical lumps and their quantum descendants," "The uses of instantons," "1/N" は、今読んでも勉強になります。
これらの講義録は1985年に"Aspects of Symmetry"と名付けられた本にまとめられています。
私も、数年前にエリチェに行きましたが、すばらしいところでした。エリチェは険しい山の上から地中海を見渡す中世の町で、夏の学校の校長をされているNino Zichichiさんは町の名士だそうです。講義は古い教会を改造した美しいホールで開かれますが、工事の時にZichichii家が400年前に寄付した壁画が出てきたのだそうです。講師や生徒には町の中のレストランのリストが渡されて、夏の学校の期間はどこに行ってもタダで食事ができるようになっていました。
場の量子論は、't HooftとVeltmanによるゲージ理論のくりこみ可能性の証明から、1984年の超弦理論革命までの十数年間に大きな進歩を遂げました。この期間の様子についてColemanさんは次のように書いています。
"This was a great time to be a high-energy theorist, the period of the famous triumph of quantum field theory. And what a triumph it was, in the old sense of the word: a glorious victory parade, full of wonderful things brought back from far places to make the spectator gasp with awe and laugh with joy."
私はこの時期が終わってから大学院生になり、この英雄時代を経験しなかったので、場の理論の教養にかけているものがあるのではないかと気になっていました。 (今でも、気になっています。) Colemanさんの講義録を読むことで、当時の様子を少しは追体験できたのではないかと思っています。
長くなってきたので、今回はここまでにします。続きは、また後日に。
by planckscale
| 2010-11-17 13:35