2013年 09月 30日
「楽しむ科学教室」 と ノーベル賞予想 |
日曜日には、小柴昌俊さんがノーベル賞の賞金をもとに始められた平成基礎科学財団の「楽しむ科学教室」で、「重力とは何か」と題したお話しをしました。
左の写真は講演前に、控え室で撮りました。撮影は、リニアコライダー国際推進委員会委員長の駒宮幸男さんです。
講演の様子はNHKが撮影し、DVIを作成して、教材として全国の高校、大学等の教育機関等に送られるそうです。
さて、来週は今年度のノーベル賞受賞者の発表ということで、朝日新聞編集部からWEBRONZAに受賞者予想を書くようにとの依頼がありました。
科学者の立場から見ると、科学の進歩の最良の部分を一般の人々に知ってもらうまたとない機会でもあるので、1年に1回のお祭りとしてお祝いするため、予想記事を書いてみました。
記事の最初の部分を公開します:
2013年ノーベル物理学賞は誰に?
アルフレッド・ノーベルは1896年に亡くなったとき、資産の大部分を「ノーベル賞」設立のために残した。それまで、特定な課題の解決に対して与えられるパリ賞などはあったが、広い分野の中から毎年一つの業績を選び、国籍を問わずに授与される賞はまれだった。新しい試みであり、スウェーデン王のオスカルII世が外国人の業績を顕彰することに反対したこともあって、第1回の授賞式が行われるまでに4年もかかった。
ノーベル賞は初めての大きな国際賞であり、また量子力学の勃興による物理学の革命的発展の時期と重なったこともあって錚々たる受賞者が並び、湯川秀樹が1949年に受賞するころには神話的ともいえる特別の権威を持つことになる。この賞を与える特権はスウェーデン科学アカデミーの国際的地位を上げ、その恩恵は計り知れない。日本の学術振興会がストックホルムに事務所を構えているのも、ノーベル賞と無縁ではなかろう。
科学者の立場から見ると、分野や受賞者の選択に異議がある場合もあるが、科学の進歩の最良の部分を一般の人々に知ってもらうまたとない機会でもある。1年に1回のお祭りとして、素直に祝いたい。そこで、10月の受賞者発表に先立ち、今年の物理学賞受賞者を予想してみよう。
ノーベル賞の選考基準は保守的であり、数世紀後に振り返っても科学史に残っているような発見を顕彰することを目指している。受賞者は3人までという制限も厳密であり、これが選考を難しくする。素粒子論の分野では「強い力の漸近自由性」の発見は重要であったが、発見したとされる人が4人もいたので、ノーベル賞授賞までに時間がかかった。選考委員会は、そのうちのひとりであるヘーラルト・トフーフトには別な年に別な業績に対し授賞をすることで、解決を図った。
保守的であることのもうひとつの表れとして、理論の業績としては、実験によって確実に検証されたものしか対象にしないという不文律がある。いったん授賞した業績が将来覆ってはいけないからである。実験的検証を受けていない超弦理論は当分授賞対象になることはないので、この理論を研究している私は、この記事を公平な立場で書くことが出来る。
⇒ この先はWEBRONZAのウェブページでご覧ください。
左の写真は講演前に、控え室で撮りました。撮影は、リニアコライダー国際推進委員会委員長の駒宮幸男さんです。
講演の様子はNHKが撮影し、DVIを作成して、教材として全国の高校、大学等の教育機関等に送られるそうです。
さて、来週は今年度のノーベル賞受賞者の発表ということで、朝日新聞編集部からWEBRONZAに受賞者予想を書くようにとの依頼がありました。
科学者の立場から見ると、科学の進歩の最良の部分を一般の人々に知ってもらうまたとない機会でもあるので、1年に1回のお祭りとしてお祝いするため、予想記事を書いてみました。
記事の最初の部分を公開します:
2013年ノーベル物理学賞は誰に?
アルフレッド・ノーベルは1896年に亡くなったとき、資産の大部分を「ノーベル賞」設立のために残した。それまで、特定な課題の解決に対して与えられるパリ賞などはあったが、広い分野の中から毎年一つの業績を選び、国籍を問わずに授与される賞はまれだった。新しい試みであり、スウェーデン王のオスカルII世が外国人の業績を顕彰することに反対したこともあって、第1回の授賞式が行われるまでに4年もかかった。
ノーベル賞は初めての大きな国際賞であり、また量子力学の勃興による物理学の革命的発展の時期と重なったこともあって錚々たる受賞者が並び、湯川秀樹が1949年に受賞するころには神話的ともいえる特別の権威を持つことになる。この賞を与える特権はスウェーデン科学アカデミーの国際的地位を上げ、その恩恵は計り知れない。日本の学術振興会がストックホルムに事務所を構えているのも、ノーベル賞と無縁ではなかろう。
科学者の立場から見ると、分野や受賞者の選択に異議がある場合もあるが、科学の進歩の最良の部分を一般の人々に知ってもらうまたとない機会でもある。1年に1回のお祭りとして、素直に祝いたい。そこで、10月の受賞者発表に先立ち、今年の物理学賞受賞者を予想してみよう。
ノーベル賞の選考基準は保守的であり、数世紀後に振り返っても科学史に残っているような発見を顕彰することを目指している。受賞者は3人までという制限も厳密であり、これが選考を難しくする。素粒子論の分野では「強い力の漸近自由性」の発見は重要であったが、発見したとされる人が4人もいたので、ノーベル賞授賞までに時間がかかった。選考委員会は、そのうちのひとりであるヘーラルト・トフーフトには別な年に別な業績に対し授賞をすることで、解決を図った。
保守的であることのもうひとつの表れとして、理論の業績としては、実験によって確実に検証されたものしか対象にしないという不文律がある。いったん授賞した業績が将来覆ってはいけないからである。実験的検証を受けていない超弦理論は当分授賞対象になることはないので、この理論を研究している私は、この記事を公平な立場で書くことが出来る。
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by planckscale
| 2013-09-30 12:56