2014年 07月 04日
沖縄科学技術大学院大学 と 『挑戦する科学者』 |
先週はプリンストンでの超弦理論国際会議 "Strings 2014" が終了した後、土曜日の飛行機でニューヨークから成田へ。東京で一泊して、月曜日はカブリIPMUの外部諮問委員会で過去7年間の、超弦理論や場の量子論の分野での研究成果を報告。火曜日の飛行機で沖縄に向かい、西海岸の恩納村にある沖縄科学技術大学院大学(OIST)を訪問しました。木曜日に沖縄を発って、成田、ロサンゼルス経由で、コロラド州のアスペンに来ています。
OISTは、「世界最高水準の科学技術に関する研究及び教育を実践することにより、沖縄の自立的発展と、世界の科学技術の向上に寄与することを目的としている」そうです。2011年11月に正式に設立され、昨年から毎年20名程度の大学院生を受け入れています。現在の教授陣は50名規模。最終的にはCaltechと同じくらいの300名規模の教授陣を目指しているそうです。
ジョナサン・ドーファン学長や副学長の方々ともお会いし、水曜日には大学全体の研究者を対象にした講演会 (コロキウム) をしました。
また、学内もご案内いただき、立派な施設に感心しました。左の写真は、生物分野のワークショップの様子を見せていただいたところです。
私のCaltechの同僚の下條信輔さんもよくおっしゃっていることですが、日本の大学が米国の大学の制度の中で目に付く部分を一部だけ取り入れようとするのは、うまくいかないのではないか。大学制度の国際化を試みるのなら、米国式の大学を丸ごと日本に作ってみてはどうか ― というアイデアを、まさしく実践している大学でした。
大学の組織も、生物学、化学、物理学と分かれているわけではなく、私の講演会にも、生物や医学、化学の大学院生もいらっしゃいました。まだ、50名程度の教授陣なので、分野間の風通しもよさそうです。
分野間の交流といえば、『挑戦する科学者』を拝見しました。月刊誌「日経サイエンス」の連載「Front Runner 挑む」を1冊にまとめたもので、私の記事の2年前の記事も再録されています。
素粒子・宇宙では、私のほかに、CERNのLHC実験で活躍されている浅井祥仁さん、日本の初期宇宙観測実験を牽引されている羽澄昌史さん、小惑星探査機「はやぶさ」に大きな貢献をなさった山田哲哉さんの記事が掲載されています。
沖縄からアスペンまでの飛行機の中で読みましたが、物性科学や量子光学(スピントロニクス、光格子時計、高温超伝導、… )、化学(多孔質材料の北川進さんには、フンボルト賞を受賞したときに、ドイツ大統領官邸でお会いしました)、生物(クラゲやダイオウイカ)、医学(すぐに人の役に立つ科学はすばらしいと思いました)、地球物理学(日本近海海底のレアアース)、数学や理論科学(今年の2月に訪問したAIMR機構長の小谷元子さんや中村真さんとの共同研究のときにお世話になった佐々真一さも登場されています)など、第一線の科学者が自分たちの研究を熱く語る記事が続き、良質のコロキウムを連続して聞いているような楽しさがありました。
お薦めします。⇒ 『挑戦する科学者』
by planckscale
| 2014-07-04 12:30