2009年 01月 31日
ファインマンの黒板 |
左の写真は、ファインマンさんが亡くなった時の黒板の一部です。勉強すべきこととして、ベーテ仮設で解ける問題、近藤問題、2次元ホール効果などがリストされています。近藤問題の上に線が引いてあって、ベーテ仮設の方を向いた矢印がついています。ファインマンさんがベーテ仮説の方法に興味を持っていたことは、亡くなった年に次のような文章を残していることからも分かります:I got really fascinated by these (1+1)-dimensional models that are solved by the Bethe ansatz and how mysteriously they jump out at you and work and you don't know why. I am trying to understand all this better.
(ベーテ仮設で解ける(1+1)次元の模型ときたら、どこからか突然に現れて、うまくいって、なぜそうなるのかわからないのだから、参っちゃうよ。もっとよく理解したいね。)
ハイゼンベルグは磁石の性質を理解するために、格子を考えて、格子の各点の上にスピンを置いた模型を考えました。ベーテは、1次元の格子の場合、つまりスピンが1列に並んでいる場合に、この模型を解く方法を発明しました。これが「ベーテ仮設」の方法です。
私は、京都大学の数理解析研究所に勤務していた時に、三輪先生や神保先生からベーテ仮設の話をよく聞かせていただきました。ベーテ仮設の方法では、ハイゼンベルグ模型を解く問題を、ある連立方程式を解く問題に帰着します。ハイゼンベルグ模型がスピンの空間のなかで回転対称性を持つときには、連立方程式は有理関数で書かれています。スピンの空間が軸対称性しか持たないときには、連立方程式は3角関数で書かれます。そして、スピンの空間が全く対称性を持たないときには、連立方程式に楕円関数が登場します。どうして楕円関数のようなものが現れるのか、不思議でした。
今日のセミナーの講演者は、パリの高等研究所(IHES)のニキータ・ネクラソフ君で、昨日発表したばかりの論文の話をしてくれました。この話は、昨年3月に京都で開かれた江口先生の還暦の会議でも聞きましたが、今日の話はもっとすっきりと分かりました。
ある種のゲージ理論の最低エネルギー状態(真空)の分類が、ハイゼンベルグ模型のベーテ仮設に帰着することを示したものです。特に、空間が1次元のゲージ理論では、有理関数を使った連立方程式が現れます。空間が2次元で、そのうちの1次元が円のように丸まっているときには、3角関数を使った連立方程式になります。そして、空間が3次元で、そのうちの2次元が浮輪の表面(トーラスと呼びます)のようになっているときには、楕円関数が登場します。
3角関数は角度に関係するので、1次元が円のように丸まっている場合に現れるのは自然です。同じように、楕円関数は2次元がトーラスの幾何と深い関係があります。ゲージ理論の立場からは、3角関数や楕円関数の現れる理由がよくわかりました。
ベーテ仮説を使って解ける模型は、深い対称性を持っています。ネクラソフ君の理論では、ゲージ理論の真空の分類もベーテ仮設を使って解けるので、ゲージ理論にも同じ対称性が隠れているはずです。ただ、この対称性をゲージ理論にあてはめると、一つの模型の中の状態の間に関係を与えるのに収まらず、異なる模型を関係づけることになるのが不思議です。場の量子論の空間全体に作用する対称性があるのでしょうか。このような対称性の理解から、ゲージ理論の新しい発展が始まるような気がします。
by planckscale
| 2009-01-31 15:13









