2009年 06月 27日
Strings 2009: 5日目 |

今回の会議では、火曜日の停電事故のために、水曜日の午後の自由時間がなくなってしまったので、ローマ観光をする時間がまったくありませんでした。今日は最終日なので、昼休みに抜け出して、フォロ・ロマーノとコロシウムだけは見てきました。会場が街の中心にあるので、便利です。
今日のプログラムは面白い話が盛りだくさんでした。
午前中のツビ・ベルンさんとニーマ・アルカニ‐ハメッドさんの話は、場の量子論の摂動展開のような、もはや調べつくされたと思われていた部分にも新しい驚きがあり、美しい数学的構造が隠されているという話でした。
午後のダビデ・ガイオットさんは、先週発表になった立川さんたちとの共著の論文にも触れていました。
ペドロ・ビエラさんの話は、N=4超対称ゲージ理論のある種の作用素の異常次元を、ラージNの極限で厳密に計算したという報告で、これが正しければAdS/CFT対応の証明に大きな道筋がついたことになります。
二キータ・ネクラソフさんは、以前にこのブログに書いた話題のさらなる発展を報告しました。1月にCaltechで聞いたセミナーでは、4次元の超対称性を持つ場の量子論をトーラスにコンパクト化すると、真空の分類問題からXYZスピン系のベーテ方程式が出てくるという話でした。今回は、いわゆるΩバックグラウンドを考えるとカルジェロ型の可積分系が出てくるという発見も報告していました。(カルジェロさんはローマ大学の先生でしたが、カルジェロ系の仕事はサバティカルでモスクワのITEPに滞在しているときにしたそうです。)
ネクラソフさんは、以前にザイバーグ・ウィッテンのプレポテンシャルに数学的に厳密な定義を与えるためにΩバックグラウンドの概念を導入しました。そのときの仕事では、この設定の下で分配関数を計算して、Ωバックグラウンドをはずす極限を取ることで、ザイバーグ・ウィッテンの結果を導出しました。今回の話では、Ωバックグラウンドを部分的に残した極限を取ると、カルジェロ型の理論が出てくるということでした。
会議の締めくくりは、オランダの王立科学・芸術アカデミーの会長のロバート・ダイグラーフさんでした。私は、パリでのStrings 2004と昨年のCERNのStrings 2008で総括講演をしましたが、これを頼まれると全ての講演に出席しないといけないので大変です。でも、まじめに聞かないといけないので、勉強にもなります。ダイグラーフさんは、ミケランジェロ・マンガノさんの話を引用して、超弦理論の研究にはDiversityとSynergyが重要だということを強調していました。また、火曜日の停電事故に触れて、「理論屋が電気事故にあっても、午後のセッションが1日ずれるだけだが、実験屋が電気事故にあうと、実験が1年遅れる(LHCのこと)。」とか「さすがに美食で有名なイタリアだけあって、今回の会議の昼食は、ガラ・バンケットの食事と見分けがつかなかった。(つまり、バンケットの食べ物が昼食とおなじメニューだった。)」などと、やや危ない冗談も飛ばしていました。
夜には、ビットーリオ・エマニュエル2世記念堂の上のテラスで、講演者のディナーがありました。トラヤヌス帝の円柱の頂上に置かれた聖ペトロの青銅像が水平に見えます。また、反対側には、フォロ・ロマーノが見渡せるという絶景でした。ところで、講演者のディナーに行く前にホテルで休んでいたら、目抜き通りを自転車のデモ隊のようなものが通っていきました。そのときの写真です。

by planckscale
| 2009-06-27 07:39









