2009年 08月 08日
アーカイブの順番 |
木曜日の最初の講演者はゲリー・ホロビッツさんで、ブラックホールの事象の地平線の内部の特異点が、AdS/CFTを使うとCFTの言葉でどのように記述できるかという話題でした。この種の問題は、私も以前にスティーブ・シェンカーさんとパー・クラウスさんとで研究したことがあります。ホロビッツさんの話では少しずつ進歩をしているという印象を受けましたが、まだまだなぞの多い話題です。2番目の講演者はマーティン・シュネーブルさんで、弦の場の理論の古典解を生成する話でした。これは、この数年の間に大きな進歩があった話題です。以前は無限次元のヒルベルト空間の上で数値的に近似解を作っていたのが、タキオン凝縮解については厳密解が簡単に書けるようになりました。シュネーブルさんの講演はリラックスしたスタイルで、簡単な話を積み重ねて、気がついたら遠くまで来ていたという、とても上手な話し方でした。講演では、大川祐司さんの仕事が大切な役割を果たしていました。
金曜日にはセミナーはしない予定だったのですが、AdS/CFTを応用した超伝導のホログラフィックな記述(AdS/CMPと呼ぶそうです)についての話が聞きたいという要望があったので、ホロビッツさんに2日連続で講演をお願いしました。ホロビッツさんは一般相対性理論の専門家なので、ブラックホールの解の構成の仕方など質問をすると的確な返答がいただけて勉強になりました。
さて、e-Print arXivでは毎日その日に投稿された論文のリストを見ることができますが、このアーカイブの創始者のポール・ギンツパーグさんらの最近の論文によると、毎日のリストの順番と引用件数に大きな相関があるそうです。以前から、その日のリストの上のほうに掲載された論文は注目を引きやすいといわれていて、わざわざ一番上に掲載されるようにタイミングを取る人もいます。
ギンツパーグさんらの解析によると、たとえば素粒子論関係の論文が掲載されるhep-thやhep-phのアーカイブでは、その日の1番に掲載された論文は、5-15番目の論文と比べて50%から100%ぐらい引用件数が高いのだそうです。
これだけだと、因果関係があるのか、別な理由で相関が起きているのか明らかではありません。たとえば、1番に掲載させようとする人はそれだけ論文に力をつぎ込んでいるのだから、引用件数が高くなるのも当然だという理屈もありえます。しかしギンツパーグさんらによると、投稿論文数が少なくて、努力しなくても1番に掲載されるような日であっても、1番に掲載された論文は38%から71%引用件数が高くなるそうです。これは、その日のリストの1番に掲載されることと引用件数の間に因果関係があるという状況証拠と考えることができます。また、リストの最初のほうに掲載された論文の方がダウンロードされる数も多いそうです。
このような解析が発表されると、リストの1番を取ろうとする競争が過激化しそうです。
by planckscale
| 2009-08-08 09:28









