2009年 08月 11日
壁越論文、ブラームス、中東和平 |
この2月ぐらいから、東大の山崎雅人さんや、ハーバード大学のカムラン・バッファさん、カリフォルニア大学バークレイ校のミナ・アガナジックさんと行っていた研究が完成し、論文がe-Print arXivに掲載されました。⇒ http://arxiv.orgもともとは山崎さんとの共同研究の流れで、BPS状態の壁越現象を結晶融解模型によって記述しようというプロジェクトだったのですが、研究を進めるにつれてBPS状態の数え上げ自身を一挙に与える公式を見出すことができました。また、トポロジカルな弦理論とBPS状態の数え上げの関係も精密に理解することができました。たとえば、トポロジカルな弦理論の分配関数とドナルドソン・トーマス不変量の生成関数は、マクマホン関数のべきを除いて一致することが知られていましたが、このべきの部分まで説明できるようになったのも副産物の1つです。これらの結果を物理的に簡単な議論から導くことができました。また、数学の新しい予想も含まれています。
この分野は、数学と物理学の交流が盛んです。IPMUで5月に開いたフォーカス・ウィーク「新しい不変量と壁超え」で勉強したことを生かす事もできました。IPMUの皆さん、ありがとうございます。
6月にローマで開かれたStrings 2009での講演でもこの研究の一部について触れましたが、その後さらに理解が深まったので、見通しのよい論文になったと思います。何度も推敲したので、読みやすくなっているはずです。ぜひご覧ください。
そういえば、この論文の投稿の仕方は、ポール・ギンツパーグさんの研究の教訓を踏まえていませんね。
さて昨日の日曜日は、今回のアスペン音楽祭で一番楽しみにしていた、サラ・チャンさんのコンサートを聴きに行きました。午前中のリハーサルと夕方のコンサートの両方に行ったので、病膏肓です。チャンさんは8歳の頃からアスペンで演奏をされているそうで、地元ファンも沢山いるようです。私がアスペンで最初に聴いたのは13年前でした。今年は全世界的な不況のためかアスペン音楽祭でも聴衆の少ないコンサートもありましたが、チャンさんのコンサートは満員で、ミュージック・テントの外も立ち見でいっぱいでした。曲目はブラームスのバイオリン協奏曲で、自信に溢れた迫力のあるすばらしい演奏でした。
今日は、クリントン政権の時に国務長官をなさったマデレーン・オルブライトさんが、物理センターに講演にいらっしゃいました。オルブライトさんはアスペン研究所の理事もなさっていて、昨年はミュージック・テントで当時国務長官だったコンドリーサ・ライスさんが対談とピアノの演奏をなさったときには、紹介のスピーチをなさっていました。物理学センターは、そもそもアスペン研究所の一部として始まりましたが、すぐに独立の組織になりました。今回の講演会は、アスペン研究所と物理学センターの交流を目的に開かれたもので、オルブライトさんも、話のはじめには、核不拡散条約の話から、原子核の平和利用と核不拡散の釣り合いをどう取るかについて物理学者の意見を聞きたいとおっしゃっていました。しかし講演の主題は中東和平で、貧困がテロリストの温床になっているので、これを防ぐためにアスペン研究所がパレスチナ地区の経済援助にどのようにかかわっているのかという話でした。
by planckscale
| 2009-08-11 15:15









