2009年 11月 19日
文部科学省への手紙 |
行政刷新会議の事業仕分け作業で、次世代スーパーコンピュータ、先端研究、若手研究育成、外国人研究者招へいなどが予算の見送りや縮減の対象になっており、日本の基礎科学は危機的な状況にあります。
「事業仕分け」の様子をライブ中継で拝見しました。たとえば、ポストドクトラル・フェローを失業対策であるとする批判がありましたが、その場で説得力のある反論がなかったのが残念です。文部科学省が仕分け対象事業について意見を募集しているので、こうした批判にきちんと応える機会だと思います。対象事業のリストと意見の提出先はこちらにあります。 ⇒ http://www.mext.go.jp
私も手紙を書いてみました:
文部科学省
中川正春 副大臣
後藤斎 政務官
私は、米国のカリフォルニア工科大学で教授をしております大栗博司と申します。この15年間は米国で研究に従事してきました。一昨年より世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の1つである東京大学数物連携宇宙研究機構(IPMU)に主任研究員として参加し、1年間に3ヶ月の間IPMUに滞在し、数学と物理学の境界の研究に携わっております。
【中略】
今回の行政刷新会議では、「このような研究から納税者にどのようなリターンがあるのか」とのご質問がありましたので、それについての私の考えを述べます。私が米国に研究に出かけた1980年代には、まだ日本が米国の技術にただ乗りして貿易をしているという批判が聞かれました。その後このような批判が鎮静化した理由の1つとして、過去10年の間に8つのノーベル賞を受賞するなど、日本が基礎科学の進歩によって人類の知的財産に貢献しているとの認識が広まったことがあげられます。11月23日の米国ニューズウィーク誌のアンケートでは、各国の技術革新への貢献度についての米国民の評価として、日本が第1位の81%、次いで米国自身の73%、中国50%、英国28%などとなっています。このような地位は過去数十年間に渡る日本の科学政策と現場の科学者や技術者の努力の賜物であり、基礎科学への投資の納税者への重要なリターンであると思います。
【後略】
意見の締め切りは12月15日だそうですが、早めに送ったほうがよいと思います。
by planckscale
| 2009-11-19 14:12