2009年 12月 05日
東京の秋 |
昨日成田に到着したときには雨でしたが、今日は快晴の気持ちのよい1日でした。朝は電話会議の後で、IPMUでマイケル・ダインさんのセミナーがあったので、参加しようかとして、セミナー室を確認しないでビデオ会議をつないだら、別のセミナーが進行中でした。失礼しました。ダインさんがセミナーをしていた部屋にはビデオ会議の施設がなかったので、あきらめて来週の講演の準備をしました。
昼過ぎから本郷に行きました。銀杏の葉が黄色に輝いているのが美しい。写真にはうまく撮れませんでしたが。
安田講堂での益川敏英さんによる仁科記念講演を聞きました。益川さんのお話をお聞きするのは久しぶりでした。話が広がってどこに行くのだろうと思っていると、ちゃんと前の話につながって、素粒子論の豊かな世界が展望できるという楽しい話でした。その後は、東京會舘で仁科記念賞の授賞式がありました。仁科記念財団理事長の山崎敏光さんのご挨拶の後、選考委員長の鈴木増雄さんから授賞理由のご説明がありました。これまでは受賞者の挨拶というのはなかったそうですが、今回はスピーチをする機会をいただきました。私は自信がなかったので原稿を持って行きましたが、もう1人の受賞者の田村裕和さんはそらですばらしいお話をなさいました。
受賞者、これまでの受賞者とおよび財団の関係者のみで、格式ばらずに心のこもった会でした。京都大学で大学院生だったころや、東京大学で助手をしていたころにお世話になった先生方に久しぶりにお会いでき、また教科書や論文だけで名前をお聞きしていた偉大な先輩の方々からもご祝福をいただき、感激しました。ありがとうございました。
以下に、私の挨拶を添付します。最初の部分は以前のブログにもつかいました。
輝かしい歴史のある賞なので、身に余る光栄です。仁科記念賞の趣旨を拝見しますと、「比較的若い研究者を表彰することを目的とします」とありますので、これを励みにさらに研究に精進しなさいというメッセージだと受け取っております。私が京都大学に入学した年に、九後さんと小嶋さんが「ゲージ場の量子化の理論」に対して仁科記念賞を受賞され、このような先生方のもとで素粒子論の研究をしたいものだと思いました。幸いにして大学院では、場の量子論についての九後さんの透徹した理解に学ぶことができ、共同研究者にも加えていただきました。
また大学院に進学した年には、江口さんと川合さんが「格子ゲージ理論」に対して受賞されています。東京大学の助手であった数年間には、江口さんとの共同研究を通じて数理物理学の豊富な世界を知り、これが私の研究者としての基盤となりました。
大学院在学中には、稲見さんに、研究課題の見つけ方や研究の仕方から論文の書き方まで親身に教えていただきました。アメリカの大学院に進学することを考えたこともありましたが、日本で勉強をして本当によかったと思います。
私が大学院に進学した年には、グリーンとシュバルツがアノマリーを相殺する方法を発見して、超弦理論が素粒子の究極理論の候補として躍り出ました。それから4半世紀がたち、超弦理論の方法は、素粒子論にとどまらず、原子核や物性物理の問題へも応用され、また数学との交流も盛んです。科学の基本的な問題を解くための理論は、他の分野への思いがけない応用があるものだといわれます。南部先生が超伝導の理論で素粒子の質量を説明されたのは有名ですが、超弦理論の原子核や物性への応用もその例だと思います。
今回の授賞対象となりました「トポロジカルな弦理論」にしましても、20年前に研究をはじめたときには、超弦理論の散乱振幅を厳密に計算することが目的でした。しかしその後、ランダムな行列模型やチャーン・サイモンズのゲージ理論との関係が見つかり、さらには4次元のゲージ理論の厳密解の発見に使われたり、また授賞理由にありますように、ブラックホールの量子状態の理解に役立ったりと、思いがけない方向に応用が広がってきました。
しかし、超弦理論の本懐は素粒子の究極理論です。ご承知のように、超弦理論はこの方面ではいまだに候補の段階で、実験的検証を受けているわけではありません。CERNではLHCが稼動をはじめ、また今年5月に打ち上げられたプランク衛星などによって初期宇宙の扉が開かれようとしている今こそ、超弦理論の検証方法に頭を絞るべき時だと思います。
今回の仁科記念賞の授賞理由では、「アインシュタインの一般相対論と量子力学を統合する長年の夢を実現する第一歩になると期待されている」とのお言葉をいただきました。これは超弦理論の研究者全体に対して声援を送ってくださっているのだと思います。今回の受賞を励みに、統一理論の完成に向け、さらに研究に精進いたします。本日はまことに有難うございました。

by planckscale
| 2009-12-05 05:59









