2010年 06月 24日
3次元球面の正4面体分割 |
先週の火曜日にはベルリン自由大学のコロキウムを聞きに行きました。それについて書こうと思っていたのですが、水曜日からのハンブルクとミュンヘンへの出張のために先送りになっていました。
これは、今月のはじめに私が講演をしたのと同じシリーズのコロキウムで、今回はベルリン工科大学のギュンター・ツィーグラーさんとコペンハーゲンからいらしたヤン・アンビヨルンさんの講演でした。
ツィーグラーさんは数学者ですが、今回の講演の内容は3次元の量子重力理論の「ダイナミカルな3角化」と呼ばれるアプローチに関係するものでした。3次元の球面と同相な空間をN個の正4面体に分割(単体分割)する方法は何通りあるかというのが問題です。
2次元面を正3角形の集まりに分割することを「3角化」と言いますが、これを拡張して3次元の空間を正4面体の集まりに分割することも3角化と呼んでいます。「ダイナミカルな3角化」とは、1つの分割を考えるのでなく、可能なすべての分割を考えて、これをたしあげることで量子重力の模型を作ろうという考え方です。
Nが大きいときに、球面の分割の方法がある数のN乗より大きくならないのなら、分割の方法を数える分配函数が収束するので、「ダイナミカルな3角化」はうまくいく。これよりもっと大きくなると、分配函数が発散してしまい、このアプローチはうまくいかない。2次元球面の3角化では、このN乗則が成り立つことを解析的に示すことができて、これがランダム行列模型を使って2次元重力の計算ができる根拠になっています。これが3次元球面の場合にも成り立つかというのが問題です。
私自身も、1991-1992年ごろにこの問題に興味を持って考えてみたことがありますが、満足のいく結果は得られませんでした。
その後1994年になって、コペンハーゲン大学のデュルフスさんとアイスランド大学のジョンソンさんが、ある方法で生成された正4面体分割については、分割の方法はある数のN乗より大きくならないことを証明しました。そこで問題は、デュルフスさんとジョンソンさんが提案した生成方法で、3次元球面のすべての正4面体分割が尽くされるかということになります。
これは15年間未解決の問題でしたが、昨年ツィーグラーさんは学生のベネデッティさんと共同で、この方法では生成できない正4面体分割があることを示しました。残念ながら、ツィーグラーさんたちの結果からは、このような正4面体分割がどれだけあるかはわからないので、3次元の「ダイナミカルな3角化」がうまくいくかには決着が付いていません。
私が昔興味を持って考えた問題なので、少しずつ進歩しているのを見るのは楽しかったです。
ツィーグラーさんは、14ヶ国語に翻訳されている『天書の証明』を書かれるなど、数学の啓蒙活動も盛んになさっているだけあって、講演も明解でした。
アンビヨルンさんの講演は、さらに野心的に4次元の「ダイナミカルな3角化」を扱ったものでした。4次元球面の単体分割がN乗則に従うかどうかはもちろんわかっていないのですが、数値計算の結果からは、N乗より多くなるように見えます。
アンビヨルンさんたちは、「因果的にダイナミカルな3角化」というものを考えて、これでこの問題を回避しようとしています。4次元を非対称に扱って、特別な性質を持つ単体分割のみを考えるようです。数値計算ではこのような特別な単体分割の数はべき乗で抑えられるとのこと。ただし、もし連続極限があっても、対称性が回復するかどうかは明らかではありません。私はこのアプローチは勉強したことがなかったので、講演を聞くことができてよかったです。
これは、今月のはじめに私が講演をしたのと同じシリーズのコロキウムで、今回はベルリン工科大学のギュンター・ツィーグラーさんとコペンハーゲンからいらしたヤン・アンビヨルンさんの講演でした。
ツィーグラーさんは数学者ですが、今回の講演の内容は3次元の量子重力理論の「ダイナミカルな3角化」と呼ばれるアプローチに関係するものでした。3次元の球面と同相な空間をN個の正4面体に分割(単体分割)する方法は何通りあるかというのが問題です。
2次元面を正3角形の集まりに分割することを「3角化」と言いますが、これを拡張して3次元の空間を正4面体の集まりに分割することも3角化と呼んでいます。「ダイナミカルな3角化」とは、1つの分割を考えるのでなく、可能なすべての分割を考えて、これをたしあげることで量子重力の模型を作ろうという考え方です。
Nが大きいときに、球面の分割の方法がある数のN乗より大きくならないのなら、分割の方法を数える分配函数が収束するので、「ダイナミカルな3角化」はうまくいく。これよりもっと大きくなると、分配函数が発散してしまい、このアプローチはうまくいかない。2次元球面の3角化では、このN乗則が成り立つことを解析的に示すことができて、これがランダム行列模型を使って2次元重力の計算ができる根拠になっています。これが3次元球面の場合にも成り立つかというのが問題です。
私自身も、1991-1992年ごろにこの問題に興味を持って考えてみたことがありますが、満足のいく結果は得られませんでした。
その後1994年になって、コペンハーゲン大学のデュルフスさんとアイスランド大学のジョンソンさんが、ある方法で生成された正4面体分割については、分割の方法はある数のN乗より大きくならないことを証明しました。そこで問題は、デュルフスさんとジョンソンさんが提案した生成方法で、3次元球面のすべての正4面体分割が尽くされるかということになります。
これは15年間未解決の問題でしたが、昨年ツィーグラーさんは学生のベネデッティさんと共同で、この方法では生成できない正4面体分割があることを示しました。残念ながら、ツィーグラーさんたちの結果からは、このような正4面体分割がどれだけあるかはわからないので、3次元の「ダイナミカルな3角化」がうまくいくかには決着が付いていません。
私が昔興味を持って考えた問題なので、少しずつ進歩しているのを見るのは楽しかったです。
ツィーグラーさんは、14ヶ国語に翻訳されている『天書の証明』を書かれるなど、数学の啓蒙活動も盛んになさっているだけあって、講演も明解でした。アンビヨルンさんの講演は、さらに野心的に4次元の「ダイナミカルな3角化」を扱ったものでした。4次元球面の単体分割がN乗則に従うかどうかはもちろんわかっていないのですが、数値計算の結果からは、N乗より多くなるように見えます。
アンビヨルンさんたちは、「因果的にダイナミカルな3角化」というものを考えて、これでこの問題を回避しようとしています。4次元を非対称に扱って、特別な性質を持つ単体分割のみを考えるようです。数値計算ではこのような特別な単体分割の数はべき乗で抑えられるとのこと。ただし、もし連続極限があっても、対称性が回復するかどうかは明らかではありません。私はこのアプローチは勉強したことがなかったので、講演を聞くことができてよかったです。
by planckscale
| 2010-06-24 01:09









