2010年 08月 08日
ドイツ博物館と素粒子メダル |

ドイツ博物館は科学と技術の博物館。10年以上前に一度訪問したことがあります。1階は主に技術の展示で、飛行機、船、自動車など実物がたくさん置いてあります。きれいに磨かれた工作機械や発動機の展示も機械好きにはたまりません。「溶接とはんだ」という趣味的な展示室もありました。歴史的なものだけでなく、ナノテクノロジーのような新しい技術の展示も充実していました。強磁性体の超微粒子を油に混ぜた磁性流体の磁場の中での振る舞いが面白かった。
「資源掘削」の展示があるという表示があったので行ってみたら、博物館の地下に700メートルにおよぶ坑道が掘ってあって、中央ヨーロッパのさまざまな鉱山の様子が再現されていました。5月に訪問したポーランドのビエリチカ岩塩坑もありました。これだけで1つの博物館のように充実していて、全部を見て地上に戻ってくるのに1時間近くかかりました。
2階には物理学など基礎科学の展示もありました。この博物館は展示物が多いだけでなく、それらがきちんと整備されていて、故障しているものがほとんどありません。力学のいろいろなデモンストレーションを楽しみました。
開館してすぐにいったのですいていましたが、3時間ぐらい見て外に出ると博物館の外をぐるりと巻くような長い列ができていました。
ところで、今年度の「素粒子メダル」は中西襄さんの「QEDの中西-Lautrup 形式と不定計量の場の理論の研究」に対して授賞されることになったそうです。授賞理由に「中西氏の与えた不定計量の場の理論の枠組みは、その後BRS対称性に基づくYang-Mills場の共変な演算子型式に適用され、それまで径路積分のみによる定式化しか知られていなかった非可換ゲージ理論の場の理論の理解が一挙に深まった。」とあるように、正準量子化でゲージ理論をきちんと理解する枠組みを作られたものです。私もこれ(とその後の発展である九後さんと小嶋さんの理論)を勉強してはじめてゲージ理論の量子化がわかったと思いました。
また、「素粒子メダル功労賞」は坂東昌子さんの「素粒子論グループ・物理学界の活性化、特に若手および女性研究者育成への貢献」に対して授賞されることになったそうです。坂東さんは私が京都大学の大学院に入学したときには助手でいらして、いろいろお世話になりました。私が大学院1年生のときにはじめて書いて「素粒子論研究」に発表した論文は、坂東さんのご指導によるものでした。
中西さん、坂東さん、おめでとうございます。


by planckscale
| 2010-08-08 01:55