2010年 08月 24日
5つの問題 |

フォーカス・ウィークの3日目には、物性物理学者と素粒子物理学者がお互いに問題を出し合って、その問題の意義を議論することで異分野の交流を促進しようとするパネル討論会を行いました。物理学会誌の報告では、そこでの議論を5つの問題としてまとめ、その各々について短い解説を付けました。
5つの問題:
1.物性物理学のトポロジカルな相を分類できるか?
2.物性現象を使ってAdS/CFT対応を検証できるか?
3.モット絶縁体を場の理論を使って記述できるか?
4.「負符号問題」が示唆する物理は何か?
5.超弦理論ではラグランジアンの存在しない場の理論の例が知られている。このような模型は物性には現れるか?
問題1については、最近になって、IPMUの超弦理論研究者の高柳匡さんとバークレイの物性研究者の笠真生さんによる論文が発表されています。理化学研究所の古崎昭さんらのグループやCaltechのアレクセイ・キタエフさんの仕事と、超弦理論のDブレーンの分類との思いがけない対応が指摘されていて、今後の発展が楽しみです。
また問題2の解説では、スティーブン・ホーキングさんの指摘したブラックホールの情報問題を、物性の問題に焼きなおして解決することはできるかとも問いました。アスペン物理学センターでは、来年度の夏のワークショップの1つでこれに関連する話題を取り上げています。これは、高柳匡さんと笠真生さんが、スタンフォード大学のレオナルド・サスカインドさんらと共同で提案されていたものです。来年の夏には、もう1つ超弦理論のワークショップが予定されているのですが、高柳さんらのご提案になったワークショップも将来の発展の可能性が高いとのことで、これとは別枠で開催することになりました。
日本物理学会誌に書いた記事は、近日中にウェブでも公開されるそうなので、よろしければお読みください。


by planckscale
| 2010-08-24 13:59