2010年 09月 03日
アインシュタインについての質問 |
アインシュタイン・ペーパー・プロジェクトは、アインシュタインの書類を整理して出版する事業で、アインシュタイン研究の1次資料の決定版と考えられています。現在第12巻(1921年1月-12月)までが出版されています。編集長のダイアナ・ブッフバルドさんは、ご主人のジェッド・ブッフバルドさんとともにCaltechの同僚で、エジプトのアレキサンドリア図書館のシンポジウムに行ったときには一緒に観光をしたこともあります。
ブッフバルドさんから、アインシュタインの1922年の日本での講演の日本語の記録について相談を受けました。
京都大学を訪問したアインシュタインは、講演の直前に哲学者の西田幾多郎から相対論誕生の経緯について話すよう頼まれました。「それはそう簡単ではない。けれどもし自分にそれを話してくれということなら、そうしましょう。」と言って始めた講演は、科学史の貴重な資料なのだそうです。
この講演のドイツ語原文は残っていませんが、石原純による忠実な(とされる)日本語訳が発表されています。この日本語訳は何度か英訳されていますが、ブッフバルドさんは満足されずに、私に相談されました。
予断を与えないように英訳の何が気に入らないのかおっしゃいませんでしたが、アインシュタインが、マイケルソン‐モーレーの実験をどの程度知っていたのか、またそれにどの程度影響されたのかが知りたいのだと思います。
以下、石原純訳:
「私はそこでどうにかしてこのエーテルの地球に対する流れ、即ち地球の運動を実証してみたいと考えました。
(中略)
そこで一つの光源からの光を適当な鏡で反射せしめ、地球運動の方向とこれに反する方向とに従って、そのエネルギーに差があるべきことをよそうし、二つの熱電堆を用いて、これに生じる熱量の差によって試そうとしました。」
次が、核心の部分:
「この考えはちょうどマイケルソンの実験におけるものと同様でありますが、私はまだこの実験を十分に明らかにはしなかったのでした。」
質問1:「この実験」とは、アインシュタインの想像した実験のことか、マイケルソンの実験のことか。
質問2:「十分に明らかにはしなかった」とは、「細部まで考えつくさなかった」ということか、「発表しなかった」ということか。
科学史の重大問題なので、うかつには答えられません。そこで、ツィッターでも同じ質問をしたころ、東京大学物理専攻長の早野龍五さんがトゥギャリしてくださいました。ご意見のある方は、このブログにコメントしてくださっても結構です。(そのついでに、下のブログランキングにクリックしていただければ、さらに結構。)
問題の文は、今のところ次のように英訳しようと思っています。
This idea happened to be similar to that of Michelson's experiment, but
I had not made this experiment sufficiently clear.
しかし、これではどうもぎこちない。
ちなみに、この文は、次のように続きます。
「しかし私がまだ学生としてこれらの思考を自分にもっていたときにこのマイケルソンの実験の不思議な結果を知り、そしてこれを事実と承認すれば、おそらくはエーテルに対する地球の運動ということを考えるのは私たちの誤りであろうと直感するに至りました。」
by planckscale
| 2010-09-03 22:34









