2010年 10月 15日
ロジコミックス |
今日は東大‐Caltech共通講義の3回目でした。講義の途中に、どういうわけかビデオカメラが動かなくなって、少し焦りました。装置をリブートしたら直りましたが、10分ぐらい時間をロスしてしまいました。次回からは、このような場合にも素早く対処できるようにしておかなければいけません。数学者・論理学者・哲学者のバートランド・ラッセルを主人公にした漫画『ロジコミックス』を読みました。数学の基礎の確立へのラッセルの挑戦が語られます。漫画にしては珍しい話題ですが、英雄の悲劇というありがちな筋だともいえます。ただし、作者のグループ (原作者、コンピュータ学者と2人の漫画家)が何度も狂言回しに登場して、月並みな展開になるのを防いでいます。
ラッセルがカントールを訪問したり、ゲーデルが不完全性定理を発表したセミナーにヒルベルトが参加していたり、史実と異なる部分もありますが、巻末の解説でこれらの点を告白していたのは良心的だと思いました。
数学の論理的基礎を確立することに情熱を燃やしていたラッセルが、有名なパラドックスを発見するまでがクライマックスで、ホワイトヘッドとの共著である『数学原理(プリンピキア・マテマティカ)』の出来上がりに満足できなかったラッセルの興味は、平和運動や教育に移っていきます。
ウィーンでラッセルに紹介されたゲーデルが、「どのような論理的命題でも、それが正しいのか間違っているかが原理的に証明できるということは、『プリンキピア』では仮定なのでしょうか。仮定でなければ、これは証明できるべきではないでしょうか。」と聞いたときに、ラッセルが反論できずに「私もかつてはあのようであった。」と言うのは悲劇的です。(このような会話があったのかどうか、知りませんが。)
私は大学生のころにラッセルの哲学入門のような文章を読んで、その英文の明晰さとともに、論理と理性への絶大な信頼に感銘を受けました。この漫画でも、数学的の論理的基礎の確立に失敗してからも、ラッセルの論理への信頼は衰えていないように描かれています。最後の部分では、20世紀前半のこうした努力が、後半のコンピュータの発展に貢献したので悲劇ではなかったとまとめています。
数学や論理学の話題のほかにも、当時の社会的状況が丁寧に描かれていて、興味深く読むことができました。
by planckscale
| 2010-10-15 15:39









