2010年 11月 15日
場の量子論の勉強、その1 |
以前、大学1年生の無力さんから、私が学部生の時に読んだ「場の量子論や弦理論の洋書」はなにかというお問い合わせがありました。超弦理論の勉強については、すぐにお答えしましたが、今回は場の量子論についてお答えします。
私が場の量子論で初めて読んだ本は、ヤオホとローリッヒによる "The Theory of Photons and Electrons" でした。学部の2年生のときに、このブログに時々コメントをくださる藤田維明さんが「場の量子論の勉強をしよう」と言い出して、教養部にいらした井上健さんのところに相談に行きました。井上さんは、1937年に宇宙線の中に見つかり、パイ中間子ではないかと思われていた素粒子が、中間子とは異なるものであるとの説を坂田昌一と提唱されました。これは第2次世界大戦中のことで、戦後の1947年のパウエルの実験によって確認されています。井上さんは、「僕らが若いころには、この本を読んだだけで論文が書けたのだが」とおっしゃってこの本をお勧めくださいました。そこで、岡村弘之さんと3人でこの本を輪講しました。
1955年出版のこの本は、今から思えば古式ゆかしいく、場の量子論の勉強をするには必ずしも効率的な方法ではなかったと思いますが、正準形式による計算をしっかり勉強したことは役に立っていると思います(思いたいです)。3年生の後半ぐらいになってから、1964‐65年に出版されたビヨルケンとドレルの2巻本 "Relativistic Quantum Mechanics" と "Relativistic Quantum Fields" を読んで、なんと現代的な取り扱いだと感心したぐらいなので、時代に追いつくのには時間がかかりました。
場の量子論の勉強の難しさは、計算の複雑さもさることながら、無限次元の量子力学が数学的に完全に整備されていないので、まだ未解決の問題があって、基本的なところでも納得できない部分が残るという点にもあるのではないかと思います。私がビヨルケンとドレルの第2巻を読んだときには、漸近場の概念がどうしてもわからなくて困りました。
そのころには、イジクソンとズベールの "Quantum Field Theory" も買って、いくつかの章を拾い読みしましたが、通して読むことはありませんでした。
長くなってきたので、今回はここまでにします。続きは、また後日に。
私が場の量子論で初めて読んだ本は、ヤオホとローリッヒによる "The Theory of Photons and Electrons" でした。学部の2年生のときに、このブログに時々コメントをくださる藤田維明さんが「場の量子論の勉強をしよう」と言い出して、教養部にいらした井上健さんのところに相談に行きました。井上さんは、1937年に宇宙線の中に見つかり、パイ中間子ではないかと思われていた素粒子が、中間子とは異なるものであるとの説を坂田昌一と提唱されました。これは第2次世界大戦中のことで、戦後の1947年のパウエルの実験によって確認されています。井上さんは、「僕らが若いころには、この本を読んだだけで論文が書けたのだが」とおっしゃってこの本をお勧めくださいました。そこで、岡村弘之さんと3人でこの本を輪講しました。
1955年出版のこの本は、今から思えば古式ゆかしいく、場の量子論の勉強をするには必ずしも効率的な方法ではなかったと思いますが、正準形式による計算をしっかり勉強したことは役に立っていると思います(思いたいです)。3年生の後半ぐらいになってから、1964‐65年に出版されたビヨルケンとドレルの2巻本 "Relativistic Quantum Mechanics" と "Relativistic Quantum Fields" を読んで、なんと現代的な取り扱いだと感心したぐらいなので、時代に追いつくのには時間がかかりました。
場の量子論の勉強の難しさは、計算の複雑さもさることながら、無限次元の量子力学が数学的に完全に整備されていないので、まだ未解決の問題があって、基本的なところでも納得できない部分が残るという点にもあるのではないかと思います。私がビヨルケンとドレルの第2巻を読んだときには、漸近場の概念がどうしてもわからなくて困りました。
そのころには、イジクソンとズベールの "Quantum Field Theory" も買って、いくつかの章を拾い読みしましたが、通して読むことはありませんでした。
長くなってきたので、今回はここまでにします。続きは、また後日に。
by planckscale
| 2010-11-15 13:13