2010年 11月 20日
場の量子論の勉強、その4 |

稲見さんのご指導で輪講をしようと言うことになって、当時出版されたばかりだったBirrellとDavisの "Quantum Fields in Curved Space" を読みました。これは、後に超弦理論を研究するようになって、重力と場の量子論の関係を問題にするときに役に立ちました。
あるとき場の理論のスケール不変性についての章を紹介する係になって、共形変換の条件を見ていたら、2次元の時には共形対称性が無限次元になることに気が付いて、これは面白いと思いました。しばらくして、物理学教室に着任されたばかりの河本昇さんから、その年の春に発表されたばかりのBelavin、Polyakov、Zamolodchikov (BPZ) の論文を教えていただき、この無限次元の対称性を使うと場の量子論が解けてしまうことを知って、とても驚きました。
このBPZの論文に感化されて、Friedanが1982年のLes Houches夏の学校で行った講義の記録を読みました。これは簡潔ながら美しい解説で、2年後に東京大学に移ってから共形場の理論の研究をするときに基盤となりました。
稲見さんは、その前の年の1983年に、Les Houches夏の学校に参加されていて、講義録を持ち帰っていらっしゃっていました。その中でも、Jackiwのゲージ理論とアノマリーについての解説は勉強になりました。そのころ東京大学駒場の大学院で修士2年生だった炭谷俊樹さんが、「家族の指数定理」をつかって非アーベル型ゲージ理論のアノマリーを係数も含めて決定するという重要な仕事をされていました。
炭谷さんは、その後マッキンゼー社に入社され、デンマークに長期出張の際に現地の教育に感銘を受けられたそうで、デンマークから帰国後新しい学校を立ち上げられたことは、お書きになった『第3の教育』で知りました。今年からは、神戸情報大学院大学の学長もなさっているそうです。
修士1年の夏を過ぎるころに、米国のアスペン物理学センターで大発見があって、それがアノマリーに関係あるらしいといううわさが伝わってきました。I 型の超弦理論ではゲージ群がSO(32)の場合に限って(超重力理論ではE8 x E8でも)アノマリーが相殺しているという、GreenとSchwarzの発見です。
長くなってきたので、今回はここまでにします。続きは、また後日に。


by planckscale
| 2010-11-20 16:12
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Comments(12)

初カキコさせて頂きます。世界的な研究者の方がこんな身近に
ブロブを書き、更にご自身でコメに返信までなされるなんて
非常に珍しいケースではないかと、ハラハラ驚きをもって拝見させて頂いています。
別の機会にワインバーグとぺスキンについての先生の所見も披露
して下さるそうで非常にわくわくしています。
またg8さんのご質問のように、先生の数学との関わりにも関心ありありです。wittenのような複素微分幾何学、Kontsevichのような代数的代数幾何とその導来圏、そしてツイスター幾何学など
現在先生ご自身がどのようにどこまで勉強をされているのかも興味深々です。
あと研究者は研究する時間の確保のため、ある程度利己的にならざるを得ない人種だと思いますが
盲導犬を預かるボランティアに関心がおありになるという記事は
意外な一面を垣間見さして頂きました。
ブロブを書き、更にご自身でコメに返信までなされるなんて
非常に珍しいケースではないかと、ハラハラ驚きをもって拝見させて頂いています。
別の機会にワインバーグとぺスキンについての先生の所見も披露
して下さるそうで非常にわくわくしています。
またg8さんのご質問のように、先生の数学との関わりにも関心ありありです。wittenのような複素微分幾何学、Kontsevichのような代数的代数幾何とその導来圏、そしてツイスター幾何学など
現在先生ご自身がどのようにどこまで勉強をされているのかも興味深々です。
あと研究者は研究する時間の確保のため、ある程度利己的にならざるを得ない人種だと思いますが
盲導犬を預かるボランティアに関心がおありになるという記事は
意外な一面を垣間見さして頂きました。
ついすたん様、コメントをありがとうございます。最近の興味については、企業秘密なので、ご容赦ください。

今大学3年で物性を勉強しているのですが、topological insulatorの論文を読む際に、Dirac場の経路積分が出てくるのですが、何かいい入門書はないでしょうか?
お忙しいとは思いますがお答えいただけるとありがたいです。
お忙しいとは思いますがお答えいただけるとありがたいです。
oorongchaさん、たいていの場の量子論の教科書には書いてあります。

はじめての書き込みです。会社員ですが、物理が好きで「隠密」で勉楽しています。
大分前になりますけれど、アノマリーの勉強中に炭谷さんの論文に行きついて、わくわくしながら読みました。そして、炭谷さんの文献を探しているうちに「第3の教育」のブログを発見して、長いあいだ購読していました。部分的には我が子の接し方への参考にさせていただきました。でも・・・う~ん、いつかは・・・
アノマリーでは、具体的な関数形を用いなくても連続写像の概念だけから計算ができる「トポロジー」力を見せつけられます。やはり、この「言葉」に習熟しておかなければなりませんね!
これからもがんばります。いや、楽しみます。
大分前になりますけれど、アノマリーの勉強中に炭谷さんの論文に行きついて、わくわくしながら読みました。そして、炭谷さんの文献を探しているうちに「第3の教育」のブログを発見して、長いあいだ購読していました。部分的には我が子の接し方への参考にさせていただきました。でも・・・う~ん、いつかは・・・
アノマリーでは、具体的な関数形を用いなくても連続写像の概念だけから計算ができる「トポロジー」力を見せつけられます。やはり、この「言葉」に習熟しておかなければなりませんね!
これからもがんばります。いや、楽しみます。
うっとたん様、コメントありがとうございます。炭谷さんは、理論物理学でも教育でも業績をあげられて、すばらしいと思います。
大栗先生が私のかつての研究やスクールについて触れていただいていたことを今頃知り驚きました。今思えば学生の頃に書いた論文はあまりにも未熟で、穴があったら入りたいくらい恥ずかしいのですが、良いように書いて頂いてありがとうございます。
炭谷様、お久しぶりです。京都の大学院生だったときに、特別講義にいらしたこときのこをと思い出します。

お久しぶりです!よく覚えておられますね。私は記憶が全く、、汗
いや、炭谷さんはスターでしたから。ご活躍のご様子はお聞きしています。また、お目にかかる機会があればと思います。
恐縮です。帰国の際は是非お声がけください。
了解!