2011年 01月 11日
Physical Review Letters |

私が大学院生だったころには、超弦理論関係の論文がPhysical Review Letters (PRL)に載ることは、(ヘテロティック弦理論を構成した論文などの例外を除いて) ほとんどありませんでしたが、1995年の「第2次超弦理論革命」以降は、普通に掲載されるようになりました。物理学の主流のひとつとして、認知されるようになったということでしょうか。
私はこれまで4本の論文を掲載していただいて、これが5本目になります。⇒ PRL リスト
最初に掲載された論文は、カラビ・ヤウ多様体にコンパクト化されたIIA型の超弦理論のモジュライ空間の特異点がDブレーンによるインスタントン効果によってどのように解消されるかを示したものです。カムラン・バッファさんと書いたもので、短いのでPRLに出してみたら、すんなり通ってしまいました。
この論文で構成したハイパー・ケーラー計量は、数学のいろいろな問題に現れるらしく、PRLの論文なのに数学の論文によく引用されます。この間も数学の人と話していたら、「この計量の一番簡単な例は君が作ったものだよ」と言われました。
2番目の論文は、1998年にサンタ・バーバラの理論物理学研究所に滞在していたときに、ゲリー・ホロビッツさんと書きました。その数ヶ月前に、フアン・マルダセナさんが、今日ではAdS/CFT対応と呼ばれるものを発表していて、ホロビッツさんとそれが何を意味しているかをいろいろ議論していました。最初は矛盾があるように思えて、AdS/CFT対応は間違っているのではないかと思ったのですが、ブラックホールの性質をきちんと理解すると矛盾が解消して、AdS/CFT対応が腑に落ちたので論文にしました。
この論文のすぐ後に、エドワード・ウィッテンさんの論文と、ガブサーさん、クレバノフさん、ポリアコフさんの論文 (いわゆるGKP-W) が出ました。ウィッテンさんは、ホロビッツさんと私が独立に見つけたことを、きちんと引用して下さいました。
この後に、マイケル・グリーンさんとジョン・シュバルツさんと書いた、N=8 超重力理論の有限性に関する論文、また、大学院生としてCaltechにいらしていた山崎雅人さんと書いたトポロジカルな弦理論についての論文も掲載されました。特に、山崎さんとの論文はかなり数学的なものだったので、このような論文も載せてもらえる時代になったのかと思いました。
今回のパークさんとの論文については、2名の査読者からとても有益なコメントをいただき、改訂することでよりよい論文になったと思います。査読の質の高さも、さすがに老舗の貫禄だと思いました。


by planckscale
| 2011-01-11 13:16