2011年 10月 18日
ソルベー会議:マイナス1日目 |
ソルベー会議に出席するために、ベルギーの首都ブリュッセルに来ています。日曜日の午後の飛行機でロサンゼルスを発ち、月曜日の朝にフランクフルト着。朝ごはんに白ソーセージをいただいて、乗り継ぎ。昼過ぎにブリュッセルに着きました。第1回のソルベー会議は、1911年にヘンドリック・ローレンツを議長として開かれました。「放射理論と量子」と題されたこの会議は、その後の量子力学の発展に大きな影響を与えたとされています。
また、ソルベー会議以前には、ヨーロッパでも科学の分野での国際会議というのはあまり開かれておらず、この会議は科学研究の国際化にも大きく貢献したとされています。
今年はソルベー会議が始まってちょうど100周年にあたるので、「量子世界の理論」と題された今回の会議では、通常の科学プログラムのほかに様々な行事が予定されています。
科学プログラムは明後日からですが、今日はマイケル・フレイン作の演劇『コペンハーゲン』の公演を見に行きました。第2次世界大戦中の1941年にドイツの物理学者ウェルナー・ハイゼンベルグが、ドイツに占領されたコペンハーゲンに恩師ニールス・ボーアを訪ねたときの話です。1920年代に量子力学の創設に大きく貢献した師弟でしたが、この訪問の後で仲たがいしてしまったので、このときに何が話し合われたのかが科学史上のなぞとなっています。
ハイゼンベルグの自伝『部分と全体』にもこの訪問のことが書かれています。一方のボーアも、ハイゼンベルグへの手紙を書き、何度も書き直したそうですが、ついに投函されることはありませんでした。ボーアの死後、この手紙は封印されていましたが、この劇の公開によって起きた議論のために2002年に公開され、ウェブでも読むことができます。⇒ ボーアの手紙
今回の公演は、ハイゼンベルグの役はノーベル物理学賞を受賞されたディビッド・グロスさん、ボーアの役はノーベル化学賞を日本の白川英樹さんらと受賞されたアラン・ヒーガーさんという豪華キャストでした。
特に、ハイゼンベルグが核分裂連鎖反応の臨界量の計算を間違えていたことをボーアが指摘するところなど、ボーアとハイゼンベルグの議論が白熱するところは、科学者であるグロスさんとヒーガーさんの演技に臨場感がありました。
この劇は、日本でも新国立劇場などで公演されているようですが、今回のように科学者による演技を試みるのもおもしろいのではないかと思いました。
公演の後には、作者のフレインさんや、グロスさん、ヒーガーさんらのパネル討論会がありました。
フレインさんによると、最近に公開されたボーアの手紙やハイゼンベルグの手紙から、ハイゼンベルグはボーアにドイツの原子爆弾製造計画について英米側に伝えてもらうことを期待したと考えられるそうです。たしかに、ナチスの盗聴を受けていたハイゼンベルグが、当時ドイツの敵国人で半分ユダヤ人であり、また反独活動をしていたことでも知られるボーアに、ドイツの秘密計画の話をしたのは何か覚悟があったとも考えられます。グロスさんは、「これでまた脚本を書き直すことになるのか」と、作者のフレインさんに突っ込んでいました。
また、科学者の社会責任についても取り上げられました。会場から、科学者は自分の研究が社会に害悪をもたらすことになることがわかっているときに、倫理的な理由から研究を止めることができるのかという質問があり、ひとしきり議論になりました。
by planckscale
| 2011-10-18 07:09









