2011年 10月 22日
ソルベー会議: 3日目 |

3日目の今日からは、いよいよ素粒子論の議論が始まりました。
午前のセッションは「粒子と場」と題して、前半は場の量子論の様々な話題、後半はLHCの物理の話でした。
まず、フランク・ウィルチェックさんの基調講演では、標準模型についての様々ななぞが指摘され、これらの理解にどのような実験が必要になるのかが議論されました。
前半の議論では、場の量子論の定義や対称性の破れの概念について、素粒子論と物性理論の研究者との間で、基本的な理解が異なっていることが明らかになりました。私が当たり前に思っていることでも、違う分野の研究者にとってはそうでなかったり、その逆のことがあったりと、異分野との交流は一筋縄ではありません。
そこがまた楽しいところですが。
ザイバーグさんが、場の量子論の今後の課題のひとつとして、ラグランジアンを持たない理論の理解が重要であるということを強調したところ、ポリヤコフさんが「ラグランジアンは、適切に表彰を与えた上で埋葬すべきである」というランダウの言葉を引用していました。
また後半の議論では、素粒子の標準模型が確立してから25年ほどの間に提案されてきた標準模型を超える様々な模型が、いよいよLHC実験で検証されることが話題の中心でした。ヒッグス粒子の発見は、もちろん標準模型の詰めになるわけですが、その質量によっては標準模型を超える模型にも制限を与えることになります。サバス・ディモポロスさんは、「今年のクリスマスまでに、ヒッグス粒子が見つからなければ、心配をするべきか」とという質問で話を始めました。必ずしも超対称性模型と矛盾するわけではないという落ちでした。
ヒッグス粒子が見つからなかった場合にはどうなるのかという質問には、午前の議長のハワード・ジョージャイさんが、ヒッグス粒子が複合粒子である可能性も否定されたわけではないと強調していました。
昼食の時間には、物性理論のシャォガン・ウェンさんと、QCDがどのような意味で定義されているのかについて議論になりました。
前回のソルベー会議は2005年に開かれました。右の写真が前回のときのもの。振り返ってみると、このときより、今回の会議のほうがおもしろいように思います。前回はもっぱら素粒子論の研究者(と数名の数学者)の集まりだったところが、今回は素粒子論と物性理論が半々ぐらいで、お互いに他の分野の人がいるということで緊張感を持って議論をしているからではないかとも思いました。
素粒子と物性の対話ということでは、IPMUでも昨年同じようなテーマで国際会議を開きました。⇒そのときのブログ記事
このIPMUの会議では、もっぱら物性物理学の話題に素粒子の手法がどのように使えるのかを主として議論がされましたが、今回のソルベー会議では、素粒子論本来の話題も多く取り上げられて、それに対して物性の研究者が意見を述べるということで、議論の幅が広がっているように思いました。
今日は、午後は自由時間だったので、最近完成したマグリッド美術館に行って見ました。これまでブリュッセルの様々な美術館にあったルネ・マグリッドの作品を一箇所に集めたもので、その全貌を一挙に見ることができるすばらしい美術館でした。
夜には、ブリュッセルを一望できる会議場で宴会が開かれました。入り口にマグリットの「光の帝国」シリーズの壁画があって、オリジナルだと言うことで驚きました。
宴会の帰りには、量子情報を研究している人たちといっしょになったので、さりげなく「もし量子コンピュータができたら何に使うのか」と聞いたら、ひとしきり議論になりました。
by planckscale
| 2011-10-22 06:36









