2012年 02月 11日
理化学研究所 総会 |
木曜日には、理化学研究所(RIKEN、理研)の研究員会議の年次総会で講演をしました。研究員会議には1000人以上の会員がいらっしゃるそうで、今回の講演も、和光市の「本所」のほかに、つくばや播磨などの研究拠点にもビデオ中継され、そのほかにも所内から200名を超えるアクセスがあったそうです。
講演会では毎年テーマを決めているそうで、今年度いただいたテーマは「科学者の矜持」でした。
「矜持」という言葉を和英辞典で引くと、英語では pride となっていて、たしかに左のポスターでも英語版のテーマは、"Taking Pride in Science" となっています。しかし、日本語で「矜持」というときには、単にプライドというだけでなく、誇りに伴う責任という意味も含まれているように思います。
研究員会議代表幹事の渡邊康さんのご説明にも、
「ここ1年間に起きた様々な事柄を思い返すと,それらは私たち科学者の役割について考えさせられることばかりであることに思いいたり,その意味合いをもたせたテーマと致しました。」
とありました。
「ここ1年間に起きた様々な事柄」と言えば、もちろん東日本大震災とそれにともなう福島第一原子力発電所の事故が思い出されます。正月の記事にも書きましたが、震災の後には、素粒子論や超弦理論のように浮世離れした研究をしている意味があるのだろうかと思うこともありました。
その一方で、自然をより深く知りたいという探究心に駆られて、10億×10億×10億メートル先の宇宙の姿から、10億×10億分の1メートルのミクロの世界まで理解しようとする人間の営みには、それ自身すばらしい価値があると思います。
また、このような基礎研究も、いつかきっと役に立つときが来る。数学者の森重文さんも、ご自身の研究について、「今すぐは無理だが,50年先か100年先かわからないが役に立つ.そのためには今のところ数学者の学術的探究心が研究の方角を示す最高のコンパスだ」とおっしゃっています。
講演の本編では、超弦理論の研究の歴史から、私の「トポロジカルな弦理論」の研究、ブラックホールの情報問題と、それに触発されたホログラフィー原理の応用についてお話しました。
ホログラフィー原理をめぐる最近の発展は、「科学の基本的な問題に触発された美しい理論は思いがけない応用を持つことがある」ことの例だと思います。
研究員会議総会では、理研理事長の野依良治さんが、ご自身の研究を振り返る講演をお聞きすることもできました。野依さんが発見された「キラル触媒による不斉反応」は、基本的な反応であり、なおかつ医薬、農薬、香料を始めさまざまな分野に応用されています。「科学は役に立たなければいけない」というお言葉にも説得力があります。(「大栗さんの研究も、人生観を変えるという意味で役に立っている」とフォローしてくださいましたが…)
研究者としての自分を語る論文を1篇出してみろ(10篇や20篇出してくるのではなく、1篇に絞って)というお話にも強い印象を受けました。
総会の後は、別室で懇親会。いろいろな分野のかたがたとお話をする機会があり、理研には熱い研究者が多いと思いました。
講演のご招待をしてくださった幹事会の皆様、ありがとうございました。
by planckscale
| 2012-02-11 14:16









