2012年 04月 01日
N=4 SYM, 3日目 |

今日は会議の最終日で午前中だけでしたが、とりわけすばらしい講演が続きました。
最初の講演者はCERNから駆けつけたマリア・スピロプルさん。LHCは8TeVにエネルギーを上げて運転が始まったばかりです。スポロプルさんは、前回の実験データの最新の解析の結果-特にヒッグス粒子や超対称粒子の探索の現状についてお話になりました。
ジョセフ・ポルチンスキーさんは、「スケール不変な場の量子論は共形不変であるか」という重要な問題が4次元の場合に解決したことをアナウンスされました。2次元の場の量子論については、1987年に、ポルチンスキーさん自身が、前年のザモロジコフの結果を使って、ローレンツ不変でユニタリーであれば、スケール不変性が共形不変性を含意することを証明しています。それ以来、同じ定理が高次元でも成り立つかどうかは積年の課題でした。一昨年には、CaltechとカブリIPMUの長期研究員の中山優さんが、AdS/CFT対応を使って、ホログラフィー原理が成り立つ場合には、ある種の仮定の下で同様の定理が4次元でも成り立つことを示しています。昨年の夏に、コモルゴフスキーさんとシュビマーさんが、ザモロジコフの結果を4次元に拡張してから、ポルチンスキーの定理も4次元で成り立つのではないかという機運が高まってきたのですが、ポルチンスキーさんは、マーカス・ルーティさんとリッカルド・ラタッヅィさんと共同で、その筋での証明に成功したようです。「ようです」と書いたのは、証明の詳細が講演だけではわからなかったから ― 論文が楽しみです。
フアン・マルダセナさんは、ベーテ仮設の方法を使って、N=4の超対称ゲージ理論でクォークと反クォークの間のポテンシャルを厳密に計算した話をされました。この量は、尖りのあるウィルソン・ループの期待値の計算と関係していて、後者は以前に私も、デイビッド・グロスさんとナダフ・ドルッカーさんと一緒に、AdS/CFT対応を使って計算したことがあったので、特に興味のある問題でした。
会議の最後を飾るエドワード・ウィッテンさんは、超弦理論の摂動計算について完全にわかっていなかった部分を解決される話をされました。98パーセントまでは1990年代のはじめまでにわかっていたのだが、残りの2パーセントを整理したのだと謙遜されていましたが、私には昔からもやもやしていたところがすっきりしてうれしかったです。
今回の会議には、雑誌『サイエンティフィック・アメリカン』の編集者が参加していたようで、早速会議のついていの記事が書かれていました。⇒ 『サイエンティフィック・アメリカン』の記事
記事はもっぱら6次元の(0,2)理論について書かれています。アルカニ‐ハメッドさんが1日目の講演で、4次元のN=4超対称ヤン‐ミルズ理論と6次元の(0,2)理論の関係を話すときに、映画『スター・ウォーズ』で、ダース・ベーダーが暗黒の支配者だと思っていたら、それを上回る銀河帝国皇帝パルパティーンがいたという話をたとえに使ったことに、編集者が興味を持ったようです。
私は、今日の座長を仰せつかったので、会議の最後に、N=4超対称ヤン‐ミルズ理論を提案され、このような数理物理学の隆盛の基礎を築かれたジョン・シュワルツさん、ラース・ブリンクさん、そして今はなきジョエル・シャークさんにお礼の言葉を述べました。会議の後には、昼食用のサンドイッチの箱が配られました。近所のハンチントン植物園に散策にいらした人たちもいたようです。素粒子論研究室のフロアーに戻って、サンドイッチを食べながら議論に興じる人も多く、私もそのグループに参加しました。
by planckscale
| 2012-04-01 14:46









