2012年 04月 23日
サイモンズ・シンポジウム 0日目 |
カリブ海に浮かぶ米領バージン諸島の一つであるセント・ジョン島に来ています。明日からここで、サイモンズ財団によるシンポジウムに参加するためです。シンポジウムのタイトルは「結び目のホモロジーとBPS状態」。サイモンズ財団は、著名なヘッジファンドの会社『ルネッサンス・テクノロジー』の経営を最近退かれたジム・サイモンズさんが出資された財団で、ストーニーブルック大学にある「サイモンズ幾何学物理学研究所」を創立されるほか、様々な形で数理科学の研究を支援して下さっています。
結び目を作ったときに、ひもを切ったりつなぎなおしたりしなくても、連続的な変形だけでほどけるかというのは、数学の大きな問題でした。右の図のような結び目なら、ほどけないことはすぐにわかりますが、複雑に絡み合っているひもについても見ただけでほどけるかどうかをどう判定したらよいかという問題です。1990年のフィールズ賞の対象の一つとなった「ジョーンズ多項式」は、強力な方法ですが、この問題を解くだけの力があるかどうかはわかっていません。
1999年に、私とバッファさんは、「トポロジカルな弦理論」を使うと、この「ジョーンズ多項式」とその一般化が計算できることを示しましたが、そのときに、弦理論の計算がもう少し詳しい情報を持っていることにも気が付きました。これが、今回のシンポジウムのタイトルにもある「BPS状態」です。
私たちは当時は知らなかったのですが、このほぼおなじころに、数学者のコバノフさんが、結び目に対して「ホモロジー」という数学的概念を対応させることができることを発見しました。
その数年後になって、トポロジカルな弦理論とコバノフのホモロジーが実は同じものであることが明らかになりました。これが、今回のシンポジウムのタイトルのいわれです。
さらに今から2年前に、クロンハイマーさんとムロウカさんが、コバノフ・ホモロジーを計算すれば結び目が解けるかどうかが判定できることを証明して、この方法の重要性が明らかになりました。今回の会議が、初年度のサイモンズ・シンポジウムの一つに選ばれたのもそのような理由です。
昨日の夜にロサンゼルスを発って、夜行便でニューヨークに。そこで乗り換えてバージン諸島のセント・トーマス島。されにそこからボートに30分ぐらい揺られてようやくセント・ジョン島につきました。今日はゆっくり休んで、明日からのシンポジウムに備えます。
by planckscale
| 2012-04-23 05:13









