2012年 05月 06日
TEDx とマヨラナ・フェルミオン |
昨年はCaltechでTEDxCaltechがありましたが、今年の5月20日(日)には東京大学の本郷キャンパスでTEDxUTokyoが開かれます。私にも登壇のご依頼があり、ちょうど機会よく東京に行く予定があったので、参加することにしました。私の講演のタイトルは、「究極理論の夢」。なぜ究極理論が存在すると信じるのか、その候補である超弦理論は何を目指しているのか。私自身の研究動機を交えつつ、自然界の最も奥深い真実である究極理論への旅を語りたいと思います。
参加申し仕込みは5月12日締め切りで 、こちらから。⇒ TEDxUTokyo参加申し込み
Caltechでも、来年の1月にまたTEDxCaltechが開かれます。今回のお題は「脳」だそうです。
話は変わりますが、今週のコロキウム(物理教室談話会)は、カリフォルニア大学アーバイン校のジェイソン・アリシアさんが、物性物理学におけるマヨラナ・フェルミオンについてお話になりました。電子には反粒子があって、質量は電子と同じですが、電荷が逆符号の粒子です。陽電子と呼ばれていて、ディラックが予言し、アンダーソンが宇宙線の中に発見しました。一般に、粒子と反粒子が出合うと、対消滅して、光などのエネルギーになります。逆に真空にエネルギーを与えると、粒子と反粒子を対生成することができます。
電子の場合には、その反粒子である陽電子は電子と逆符号の電荷を持つ別種の粒子ですが、自分自身が反粒子になる粒子もあります。たとえば、光の量子である光子もその例です。
電子のようなフェルミ型粒子(フェルミオン)でも、自分自身が反粒子になる場合があり、これがマヨラナ・フェルミオンです。
イタリアの物理学者エットーレ・マヨラナが1937年に予言しました。しかしマヨラナは翌年、シチリア島のパレルモからナポリに向かう船に乗った後で失踪してしまいました。事故、自殺、誘拐、暗殺、亡命など様々な説がありますが、マヨラナの行方は謎のままです。
マヨラナ・フェルミオンは、素粒子の模型でしばしば考えられ、たとえば、ニュートリノがマヨラナ・フェルミオンかどうかというのは素粒子物理学の大きな問題です。ニュートリノがマヨラナ・フェルミオンなら、ニュートリノを含まない二重ベータ崩壊が起きるはずなので、それを確かめようとする実験も盛んに行われています。
これとは別に、物性物理学の分野でも、マヨラナ・フェルミオンの存在が予言されていました。たとえば、超伝導状態では、電子数が保存していないので、超伝導状態から粒子を生成する作用と、反粒子を生成する作用が混ざることになります。このような特殊な量子状態を考えると、電子の集団現象として、マヨラナ・フェルミオンが現れることがあるというのです。
そこで、世界中の研究所が物性現象の中にマヨラナ・フェルミオンを見つける競争をしていたのですが、オランダのデルフト大学のカブリ・ナノサイエンス研究所のグループがついにこれを発見しました。東京大学のカブリIPMUと同じカブリ財団による支援を受けている研究所です。先月の『サイエンス』誌に発表になりました。
量子力学の原理を使って計算を行う量子コンピュータの理論は盛んに研究されていますが、これを実際に行うためには、量子情報を保つ方法が必要になります。その一つの方法として、マヨラナ・フェルミオンを使うことが考えられています。マヨラナ・フェルミオンが現れるような状況では、量子情報を、波動関数のトポロジカルな性質に保存することができるからです。
ここ数年話題になっているトポロジカルな絶縁体といい(先日カブリIPMUからプレスリリースを出していただいた押川さんと私の研究も関係する話題です)、今回のマヨラナ・フェルミオンといい、場の量子論を高度に使った理論的予言が物性実験で実証されるのは楽しいことだと思います。
by planckscale
| 2012-05-06 14:39









