2012年 05月 21日
TEDxUTokyo |
土曜日の早朝に東京について、日曜日には東京大学本郷キャンパスの伊藤謝恩ホールで開かれたTEDxUTokyoで講演をしました。TEDの講演の目的は、「広める価値のあるアイデア(Ideas worth spreading)を語る」ということだそうです。私の講演では、2つのアイデアを語りました。
ひとつは、「究極理論は存在する」というアイデア。私たち人間は細胞からできていて、細胞は原子から、原子は電子と原子核から、原子核は陽子と中性子から、陽子と中性子はクォークからできているとされていますが、ではこの連鎖(自然界の階層構造)はいつまでも続くのか、それともどこかに終わりがあるのか。講演では、この連鎖はあるところ打ち止めになり、そこに究極理論が存在すると考える根拠を述べ、その候補である「超弦理論」について語りました。
しかし、今回のTEDxUTokyoは「10年後のイノベーションを共に描こう」というテーマでしたので、純粋に学問的な話題だけでなく、このような「役に立たない研究」にどのような意義があるのかについても語りたいと思いました。
私たちが日々手にふれるもののほとんどすべては、科学の成果によって開発されたり改善されたりしたものです。その科学の進歩のためには基礎から応用につながる幅広いポートフォリオが必要です。しかしそれだけでなく、イノベーションには、純粋な好奇心による基礎研究から生まれてきたものが数多くあります。
私の講演の次には、Yahooの事業戦略統括本部長をされている安宅和人さんが登壇されることになっていたので、インターネット産業の基礎となっているウェブブラウザーは、CERNにおける素粒子物理学の研究のために発明されたという話をしました。
また、Caltechの学長が最近行った講演から、次の部分を引用しました:
「科学の研究が何につながるかをあらかじめ予測することはできないが、真のイノベーションは、自由な心と集中力を持って夢を見ることができる環境から生まれる。」
「一見役に立たない知識の追求や好奇心を応援することは、わが国(米国)の利益になることであり、これは守り育てていかなければいけない。」
イノベーションがやせ細らないように、基礎的な研究も大切にしていただきたいと思います。
私の講演のビデオは、Youtubeで見ることができます。
普段の講演では原稿は作らないのですが、今回は同時通訳に必要ということで、原稿を用意してそれに沿って話をしました。講演の後で、「スライドに用意してあることから外れて話をした部分が特に印象に残った」、また「講演の後のQ&Aでの受け答えがよかった」とのご意見をいただきましたので、会場からの反応を見ながらの即興の部分も大切なのだなと思いました。
私は午後の部から参加しましたが、すばらしい講演をお聞きすることができました。
たとえば、東京大学地震研究所の大木聖子さんは、ご自身の経験を踏まえて、地震による「理不尽な死」を防ぐためのアウトリーチ活動の重要性について語られました。
その内容も感動的でしたが、美しい英語にも感銘を受けました。こうした場所でのプレゼンテーションのお手本のような講演で、私の日本語なまりの英語とは大きなコントラストでした。
東京大学生産技術研究所の沖大幹さんは、地球上での水の循環システムというスケールの大きな話で、観測されている海面の上昇率が、地球温暖化による氷の溶解や海水膨張だけでは説明できない。地球温暖化とは直接関係のない、地下水のくみ上げなどの人間の活動が海面の上昇に大きな影響を与えているという話をされました。翌日に『ネイチャージオサイエンス』誌に発表される予定の
沖さんは、語り口といい間のとり方といい絶妙で、会場を沸かせていました。ふと思って、講演の後に「関西のご出身ですか」とおききしたら、その通り。「関西の学校では、いくら勉強ができても、笑いが取れないと尊敬されない」のだそうです。子どものころから鍛えられているのですね。
今回のTEDxUTokyoは、企画から運営まですべて東京大学の学生が行ったものでした。皆さん情熱を持って取り組まれて、すばらしいイベントになったと思います。
私の講演の準備でも、講演の概要から原稿の作成、スライドのデザインにいたるまでお世話になりました。講演は普段一人で準備するのですが、他の人に見ていただいて意見をいただき、「そういう見方もあるのか」と参考になることもありました。私の受け持ちとなって下さった工学部の入矢達秋さん、ありがとうございました。
by planckscale
| 2012-05-21 19:13









