2012年 07月 13日
学際研究を生む環境 |
アスペンに来てうれしいことのひとつは、異分野の研究者と交流する垣根が低いということです。先週から、素粒子論の「ゲージ理論の厳密な性質とその応用」のワークショップと、物性理論の「電子相関系のスピン‐軌道効果」のワークショップが並行して開かれており、今日はこの二つのワークショップの合同セッションが開かれました。
セッションの話題はエンタングルメント・エントロピー。この概念は物性理論ではトポロジカルな相を分類し特徴付ける重要な量として注目されていますが、素粒子論でもゲージ理論のさまざまな性質を理解する上で大きな役割をすることがわかってきました。
超弦理論において発見されたホログラフィー原理も、最近は物性理論でもよく使われているようです。MITの物性物理学者のセンティルさんの講演では、エンタングルメント・エントロピーが計算できる例をあげているときに、「この場合にはホログラフィーによる計算が知られています」と言って、何気にアインシュタインの重力方程式の解を黒板に書き始めたのには驚きました(上の写真です)。
先日ブログ記事に書いた、物性物理学者の押川正毅さんとの共同研究も、昨年、アスペンに来ているときに始まりました。
この研究に関連して、岩波の雑誌『科学』の編集部から「素粒子論と物性論の結びつきの面白さについて」語るように依頼され、7月号に押川さんとの対談が掲載されました。⇒ 『科学』7月号目次
この対談では、素粒子論と物性理論のアイデアの交流の歴史や、理論物理学の研究を進める上での「イメージ」の役割などについてもっぱら語り合いましたが、学際研究が成功するための条件についてもお話しました。対談の最後の私の発言を引用します:「異分野と協働する仕事は、アメリカでも簡単なことではありません。いろんな障害があって、ひとつには、どう評価するか、という問題があります。つまり、ちがう分野で仕事をすれば、ふだんはそちらの専門家でないから、甘いところもあったりする。一方で、もとの分野の人からすると、まじめに自分の分野の研究をしたらと、見られることもあるわけです。そういう仕事をどう評価し、どうエンカレッジするかも重要なことと思います。エンカレッジされる環境にしていくことで、交流が盛んになるのではないでしょうか。」
この研究成果は、東京大学の広報誌「Todai Research」にも、「未発見の素粒子がトポロジカル絶縁体で活躍:アクシオン研究にヒントを得た、新しい相転移の予言」というタイトルで掲載されました。⇒ Todai Research
by planckscale
| 2012-07-13 14:17









