2012年 08月 12日
峡谷から星たちへ |
今週はアスペン物理学センターに滞在しています。水曜日の午前中には論文をまとめていて、不等式の導出の部分でどのように説明すべきか行き詰まったので、気分転換に散歩に出かけました。
物理学センターの北側はワイルド・セージの野原になっていて、その先にアスペン音楽祭のコンサートホールと、アスペン・インスティテュートの講堂があります。散歩していると、講堂の中に次々に人が入っていくのが見えたので、何をしているのだろうかと行ってみました。
ロビーに入ると、音楽祭のCEOのアラン・フレッチャーさんがメモを見ながら考え事をしています。受付の女性に何があるのですかと聞いたら、
「オリビエ・メシアンの話ですが、聞いていかれますか」
とおっしゃいます。
毎週水曜日のお昼に、音楽祭でその週に演奏する曲の一つを取り上げて説明してくださるのだそうです。
今回の話題は、フランスの作曲家メシアンの『峡谷から星たちへ』。メシアンが、米国建国200周年記念のための作曲を依頼されて米国に滞在しているときに、ユタ州の国立公園を訪れた印象をもとに作曲したものだそうです。
メシアンは難しい曲を作る人だという印象があったのですが、この機会に説明を聞いてみようと思い講堂に入ると、ステージに椅子が二脚置いてあって、フレッチャーさんがその一つに腰掛けます。
しばらくすると、隣のコンサートホールでリハーサルをしていた音楽監督のロバート・スパルノさんが駆けつけて、フレッチャーさんと二人でメシアンについての対談になりました。
メシアンの生い立ちから、音を聴くと色彩や模様などを連想するという共感覚の話(作曲家でもあるフレッチャーさんが、以前に「緑」というタイトルをつけた曲をシカゴで演奏したときに、シカゴ大学の美学の先生で共感覚を持っている人が、演奏の後で現れて、「ご承知かと思いますが、あの曲はどう見ても青ですよ」と言われた話)、鳥の声の専門家となり世界中の鳥の声を採譜した話、敬虔なカソリック信者として数多くの宗教音楽を作曲したこと、その一方でインド古典音楽やバリ島のガムラン、日本の雅楽などにも影響を受けたことなどを興味深く聞きました。
会場からの質問に答えて、「移調の限られた旋法」についての詳しい解説もありました。また、別な人から
「メシアンの曲は私にはどうしてもわからない。どのように聞いたらよいのでしょうか」
との質問があると、スパルノさんは、
「西洋音楽だと思わずに、たとえばバリ島に休暇に行っていて、ガムランの曲を聴いていると想像することからはじめてはいかがでしょうか」
とおっしゃいました。
そこで、私も翌日の木曜日の夕方の演奏を聴きに行くことにしました。
聴きに行ってよかった!
ユタ州南部にある国立公園の美しい岩山の様子や、様々な鳥の声の描写から、夜空を見上げ、星々の中に入り、宇宙の中の人間の位置について考えるという壮大な展開でした。
途中に入るホルンやピアノの独奏もすばらしい。100分という長い曲でしたが、十分に楽しみました。
メシアンの曲は難しいと思い込んでいたのですが、他の曲も聞いてみたいと思います。
by planckscale
| 2012-08-12 14:53









