2012年 09月 03日
オスロ |

土曜日は昼ごろの飛行機でオスロに向かう予定だったので、会議場の庭で論文の推敲をしていたところ、ウラジミール・カザコフさんがボートのオールを持って現れました。ボートを借りることができるとのことだったので、私も飛行場に向かうまでの少しだけの時間にボートを漕いでみました。

カブリ賞は、カブリ財団が2年に1回、天体物理学、ナノサイエンス、神経科学の3つの分野の研究者を顕彰するためのものです。2008年の第1回目には、カーボン・ナノチューブの発見に対して、飯島澄男さんがナノサイエンス賞を受賞されています。
どれも私の研究分野ではありませんが、私はカブリ財団がCaltechに寄付をして設立した基金によるカブリ冠教授であること、今年の春に東京大学のIPMU(数物連携宇宙研究機構)が、カブリ財団の寄付基金の設立にともないカブリIPMUとなったこと、またCaltechの私の同僚のマイケル・ブラウンさんが太陽系のカイパーベルトの天体の発見によりカブリ天文物理学賞を受賞されることから参列することにしました。

カブリ賞授賞式に伴う行事は月曜日からですが、日曜日にはカブリ財団の主催でオスロ市内のツアーとレセプションがありました。
ムンク美術館では、開館の1時間前に学芸員の方が案内をしてくださいました。上の左の写真は、修復したばかりの『思春期』。2004年に盗難にあって、2年後に発見された『叫び』も展示されていました。盗難の際の損傷の修復には出光も資金協力をしたそうで、感謝の言葉が書いてありました。
数年前に完成したオペラ劇場を案内していただいた後で、ガイドの方が「これからオスロ市民でも知らない人が多いところにお連れします」とおっしゃいます。
向かったのは小さな教会のような建物。ノルウェーの有名な彫刻家グスタフ・ビーゲランの弟エマニュエル・ビーゲランのフレスコ画がありました。
最初は暗くて何も見えませんが、5分ほどして目が慣れてくると、壁から天井までフレスコ画で埋め尽くされていることがわかります。

ガイドの方に「これはフログネル公園にあるお兄さんの彫刻と似ていますね」と聞くと、その通り。
上の左の写真は、その後に行ったフログネル公園で撮ったものです。兄弟で、「生命の環」というテーマを追求していたようです。
右の写真は、ノルウェーのもっとも偉大な数学者ニールス・ヘンリック・アーベルの記念碑。これもグスタフ・ビーゲランによるものです。
オスロ市の中心街を見下ろす王宮の庭に設置されています。首都の最も重要な位置におかれているのが、政治家や軍人の銅像ではなく、数学者の記念碑だというのが素敵だと思いました。

左の写真で、時計台の横で立ち上がって話をしているふたりの一人は、今回のナノサイエンス賞受賞者のミルドレッド・ドレッセルハウスさんです。
歴代の受賞者もいらして、第1回の受賞者の飯島澄男さんとも再会しました。
また、政策研究大学院大学の黒川清さんともお会いしました。明日のカブリ賞科学フォーラムのパネリストとしていらしています。


by planckscale
| 2012-09-03 01:31