2012年 12月 13日
科学政策についての質問 |
今日の社会では、政策決定において科学や技術の知識に基づく判断が必要になることがしばしばあります。そこで、今年の米国の大統領選挙の時には、科学アカデミーなど米国の主要な科学技術組織が、候補者のバラック・オバマさんとミット・ロムニーさんに、科学政策について公開質問状を出し、回答をもらっていました。⇒ Science Debate
日本でもサイエンス・サポート・アソシエーション(SAA)という組織が、主要政党に5つの質問を送り、これまでのところ自由民主党、公明党、日本共産党、国民新党から回答を得ているそうです。⇒ SSAの質問と回答
この組織は、2009年の衆議院議員総選挙や2010年の参議院議員通常選挙でも、科学技術政策について公開質問状を作成し、いくつかの政党から回答を得ているそうです。持続した活動をしていらっしゃるのですね。
質問を拝見すると、「大学・研究機関のコンプライアンスの問題などによる、大学教員の事務作業負担増」や「博士号の取得者の就職難」などをどうするかといった、研究者の方を向いたものが多いようにおもいました。これは、質問状を出された団体が「科学技術人材が社会で活躍できる仕組みを作り、科学技術人材が生み出す知を人類社会の豊かな発展に活かすことを目的とする」ことから、自然なことだと思います。
これはこれで大切な問題ですが、このほかにも社会全体にとって重要な問題についての質問があってもよいのではないかと思いました。そのためには、日本学術会議や日本物理学会などの学術団体が、質問集を作ってはいかがでしょうか。
米国大統領選挙のときの質問集を和訳して添付します:
1.技術革新と経済: 第2次世界大戦後、連邦政府が科学の平和利用を優先課題にして以来、米国経済の成長のほぼ半分は科学と技術の成果であった。しかし、最近のいくつかの調査はこの重要な領域における米国の指導力に疑問を投げかけている。米国が技術革新において世界の主導的立場であり続けるためにはどのような政策が必要であるか。
2.気候変動: 地球の気候は変化しており、これが地上の生命に及ぼす悪影響が心配されている。排出権取引、炭素税など世界的な気候変動に対処する政策についてどのように考えるか。また気候変動のように国境を越えた問題を解決するためにはどのようにしたらよいか。
3.研究と将来: 連邦政府の研究支援は第2次世界大戦後の米国の経済成長と国防に貢献してきた。しかし、英国、シンガポール、中国や韓国は、現在これに挑戦する研究投資を行っている。次期の議会が迫られている予算削減に鑑み、来年度の予算要求で研究投資にどのような優勢順位をつけるか。
4.感染症の世界的流行と生物学的安全保障: 最近の研究により、哺乳類が鳥インフルエンザに感染する可能性が明らかになった。国際交通が盛んな今日、米国の国民を新種の病気、世界的な流行、また意図的な攻撃から守るためにはどのような対策が必要か。
5.教育: 世界経済の発展において、科学、技術、工学、数学の役割はますます大きくなっている。しかし、最近の65カ国の比較によると、米国の15歳の成績は、科学で23位、数学では31位であった。なぜ米国は過去30年間の間に後退したのか。また、科学や技術によって発展する経済に適応できるように、すべての学年の生徒を準備させるためには、連邦政府はどのような役割を担うべきか。
6.エネルギー: 多くの政策研究者や科学者たちは、エネルギー安全保障と持続可能性は、米国が今世紀に直面する大きな問題であると指摘している。エネルギーの需要に対応し、かつ経済的、環境的に持続可能な将来を保障するためには、どのような政策を支持するか。
7.食物: 科学と技術のおかげで、米国の農業は世界で最も生産性が高くかつ多様である。しかし多くの米国国民は食物の健全性や安全性を危惧している。ホルモン、抗生物質や農薬の使用、家畜の疫病、さらにはテロリズムの危険がある。米国の食料供給の健全性、安全性、生産性を保障するためにどのような手段を講じるべきか。
8.真水: 液体状態にある真水は、世界の水の1パーセントに過ぎない。科学的研究によると、米国や世界の真水は、需要の増加、砂漠化、汚染などによって危機に瀕している。すべての米国国民に清潔で豊富な真水を保障するためには、連邦政府の対策が必要か。あるのならそれは何か。
9.インターネット: インターネットは我々の経済や社会に中心的な役割を果たしている。その社会的、科学的、経済的な役割を保護するために、米国政府はインターネット活動を監督するべきか。そうであるとしたら、どのようにすべきか。
10.海洋の健全性: 科学者の評価によると、世界の漁場の75パーセントでは漁獲量が激減し、さんご礁などの魚の生活圏が危機に瀕しており、また大洋や沿岸の大きな地域が汚染されている。海洋の環境の健全性と経済的な体力を守るためには、米国政府は内政や外交においてどのような役割を果たすべきか。
11.公共政策における科学: 我々は、科学や技術が日常生活や社会のすべての側面に影響をあたえる時代に生きており、幅広い知見に基づく公共政策をおこなうためには科学や技術を無視することはできない。政策や規制の判断が科学や技術の最新の知見に基づいて行われ、また国民がこのような政策判断の根拠を評価できることを、どのように保障するか。
12.宇宙: 米国では、宇宙開発の目標の大きな議論のさなかにある。21世紀の米国の宇宙開発・利用の目標は何であるべきか。また、その目標を達成するために、政府はどのような手段を講じるべきか。
13.重要な天然資源: 天然資源の供給不足は経済成長、生活の質、国防に影響を与える。たとえば中国は現在、最先端電子装置に必要な希土類の97パーセントを生産している。重要な天然資源の量や質を確保するために、連邦政府はどのような対策をするべきか。
14.ワクチン接種と公衆衛生: はしか、ポリオ、百日咳のような予防可能な病気のワクチンが有効であるためには、広範囲の接種が必須である。しかし、地域によっては接種率が大きく減少している。公衆衛生のためのワクチン接種を強制するには、どのような方法を支持するか。また、どのような場合に接種の免除が許可されるべきか。
日本でもサイエンス・サポート・アソシエーション(SAA)という組織が、主要政党に5つの質問を送り、これまでのところ自由民主党、公明党、日本共産党、国民新党から回答を得ているそうです。⇒ SSAの質問と回答
この組織は、2009年の衆議院議員総選挙や2010年の参議院議員通常選挙でも、科学技術政策について公開質問状を作成し、いくつかの政党から回答を得ているそうです。持続した活動をしていらっしゃるのですね。
質問を拝見すると、「大学・研究機関のコンプライアンスの問題などによる、大学教員の事務作業負担増」や「博士号の取得者の就職難」などをどうするかといった、研究者の方を向いたものが多いようにおもいました。これは、質問状を出された団体が「科学技術人材が社会で活躍できる仕組みを作り、科学技術人材が生み出す知を人類社会の豊かな発展に活かすことを目的とする」ことから、自然なことだと思います。
これはこれで大切な問題ですが、このほかにも社会全体にとって重要な問題についての質問があってもよいのではないかと思いました。そのためには、日本学術会議や日本物理学会などの学術団体が、質問集を作ってはいかがでしょうか。
米国大統領選挙のときの質問集を和訳して添付します:
1.技術革新と経済: 第2次世界大戦後、連邦政府が科学の平和利用を優先課題にして以来、米国経済の成長のほぼ半分は科学と技術の成果であった。しかし、最近のいくつかの調査はこの重要な領域における米国の指導力に疑問を投げかけている。米国が技術革新において世界の主導的立場であり続けるためにはどのような政策が必要であるか。
2.気候変動: 地球の気候は変化しており、これが地上の生命に及ぼす悪影響が心配されている。排出権取引、炭素税など世界的な気候変動に対処する政策についてどのように考えるか。また気候変動のように国境を越えた問題を解決するためにはどのようにしたらよいか。
3.研究と将来: 連邦政府の研究支援は第2次世界大戦後の米国の経済成長と国防に貢献してきた。しかし、英国、シンガポール、中国や韓国は、現在これに挑戦する研究投資を行っている。次期の議会が迫られている予算削減に鑑み、来年度の予算要求で研究投資にどのような優勢順位をつけるか。
4.感染症の世界的流行と生物学的安全保障: 最近の研究により、哺乳類が鳥インフルエンザに感染する可能性が明らかになった。国際交通が盛んな今日、米国の国民を新種の病気、世界的な流行、また意図的な攻撃から守るためにはどのような対策が必要か。
5.教育: 世界経済の発展において、科学、技術、工学、数学の役割はますます大きくなっている。しかし、最近の65カ国の比較によると、米国の15歳の成績は、科学で23位、数学では31位であった。なぜ米国は過去30年間の間に後退したのか。また、科学や技術によって発展する経済に適応できるように、すべての学年の生徒を準備させるためには、連邦政府はどのような役割を担うべきか。
6.エネルギー: 多くの政策研究者や科学者たちは、エネルギー安全保障と持続可能性は、米国が今世紀に直面する大きな問題であると指摘している。エネルギーの需要に対応し、かつ経済的、環境的に持続可能な将来を保障するためには、どのような政策を支持するか。
7.食物: 科学と技術のおかげで、米国の農業は世界で最も生産性が高くかつ多様である。しかし多くの米国国民は食物の健全性や安全性を危惧している。ホルモン、抗生物質や農薬の使用、家畜の疫病、さらにはテロリズムの危険がある。米国の食料供給の健全性、安全性、生産性を保障するためにどのような手段を講じるべきか。
8.真水: 液体状態にある真水は、世界の水の1パーセントに過ぎない。科学的研究によると、米国や世界の真水は、需要の増加、砂漠化、汚染などによって危機に瀕している。すべての米国国民に清潔で豊富な真水を保障するためには、連邦政府の対策が必要か。あるのならそれは何か。
9.インターネット: インターネットは我々の経済や社会に中心的な役割を果たしている。その社会的、科学的、経済的な役割を保護するために、米国政府はインターネット活動を監督するべきか。そうであるとしたら、どのようにすべきか。
10.海洋の健全性: 科学者の評価によると、世界の漁場の75パーセントでは漁獲量が激減し、さんご礁などの魚の生活圏が危機に瀕しており、また大洋や沿岸の大きな地域が汚染されている。海洋の環境の健全性と経済的な体力を守るためには、米国政府は内政や外交においてどのような役割を果たすべきか。
11.公共政策における科学: 我々は、科学や技術が日常生活や社会のすべての側面に影響をあたえる時代に生きており、幅広い知見に基づく公共政策をおこなうためには科学や技術を無視することはできない。政策や規制の判断が科学や技術の最新の知見に基づいて行われ、また国民がこのような政策判断の根拠を評価できることを、どのように保障するか。
12.宇宙: 米国では、宇宙開発の目標の大きな議論のさなかにある。21世紀の米国の宇宙開発・利用の目標は何であるべきか。また、その目標を達成するために、政府はどのような手段を講じるべきか。
13.重要な天然資源: 天然資源の供給不足は経済成長、生活の質、国防に影響を与える。たとえば中国は現在、最先端電子装置に必要な希土類の97パーセントを生産している。重要な天然資源の量や質を確保するために、連邦政府はどのような対策をするべきか。
14.ワクチン接種と公衆衛生: はしか、ポリオ、百日咳のような予防可能な病気のワクチンが有効であるためには、広範囲の接種が必須である。しかし、地域によっては接種率が大きく減少している。公衆衛生のためのワクチン接種を強制するには、どのような方法を支持するか。また、どのような場合に接種の免除が許可されるべきか。
by planckscale
| 2012-12-13 14:58









