2013年 01月 15日
暗黒物質、暗黒の力、暗黒の光 |

宇宙には、原子などを作っている通常の物質の5倍もの暗黒物質があると考えられています。暗黒物質は、通常の物質とはほとんど相互作用をしません。
では、暗黒物質同士に働く力はどうかというと、これについても制限があります。たとえば、暗黒物質の間に重力以外の力が働くと、銀河の運動に影響が現れます。また、2つの銀河団が衝突した痕跡を調べてみると、通常の星間物質は衝突の後で一塊になっているのに、暗黒物質はお互いに素通りしていることがわかります。このような観察から、暗黒物質同士には、重力以外の大きな力は働いていないと推測されています。
しかし、暗黒物質は一種類の粒子からできているとは限りません。通常の物質の5倍もの量が宇宙にあるとすると、暗黒物質の世界は、通常の物質の世界よりも豊富な構造を持っているかもしれません。
上に書いたように、銀河の運動や銀河団の衝突の観察から、暗黒物質の大部分については力の大きさに制限がつきます。しかし、暗黒物質がいろいろな種類の粒子からできていて、その一部の間に重力以外の力が働いている可能性は排除できません。
暗黒物質の間の力ですから「暗黒力」と呼ぶことにします。
たとえば暗黒物質の1割程度の成分に暗黒力が働いているとすると、力の強さに応じて暗黒物資の分布に変化が生ずる。では、このような分布は、天体物理学の観測で検証できるであろうかというのが今日の話題でした。暗黒力のアイデア自身はこれまでにもありましたが、具体的な観測による検証を議論したのが新しいところです。
私たちが目で見ることのできる光の正体は、電磁気の力を伝える電磁場の波です。そうすると、暗黒物質の間の力を伝える場の波は、「暗黒の光」と呼ぶべきでしょうか。
暗黒物質の探求はまだ始まったばかりで、どのような世界が開けていくか楽しみです。


by planckscale
| 2013-01-15 15:05