2013年 03月 14日
いわゆるひとつのヒッグス粒子 |

3月14日は円周率の日です。学生たちが、円周率の16253桁までをリボンにして、キャンパスに巻きつけていたのです。オリーブの木に「3.14」の数字が貼ってあるところがスタート地点でした。

さて3月14日には、CERNが 「新しい実験結果は、CERNで発見された粒子がヒッグス粒子であることを示唆している」 との発表をしました。スピンがゼロであることをある程度の精度で確認できたこと(正確には、スピンが2であることを2シグマ程度で棄却できたこと)。また、問題になっていた2光子への崩壊幅が、素粒子の標準模型の予言とあってきたことが決めてだったようです。
ただし、プレスリリースを読むと、"the Higgs particle"ではなく、"a Higgs particle"となっていました。長嶋茂雄流に言うと、「いわゆるひとつのヒッグス粒子」ということでしょう。
対称性を自発的に破って、素粒子に質量を与えることに関与している粒子のことを、一般に"a Higgs particle"と呼んでいるのだと思います。それが素粒子の標準模型の予言する"the Higgs particle"と言い切るには、まだ時間がかかるようです。標準模型を超える素粒子模型には、ヒッグス粒子のようにスピンがゼロの粒子がしばしば現れるので、今回見つかった粒子が、これらの未知の粒子と標準模型のヒッグス粒子との混合した状態である可能性があるからです。

「対称と非対称」特集で、東京大学を退官されて東京理科大学で研究を続けれれている化学者の黒田玲子さんの「キラリティの科学」 - 物理ではカイラリティと呼びますが、化学ではキラリティというのですね - や名古屋大学の数学者の伊藤由佳理さんの「謎解きは対称性で」という記事もあります。
しばらく前に、20名の執筆者が美しいと思う数学の定理を選び、その魅力について書くという企画で、数学書房から『この定理が美しい』と題した本を出版していただいたことがありますが、伊藤さんと私はこの本の執筆者でもありました。このときの伊藤さんの記事は「対称性の美 ― 結晶群の分類」、私の記事は「未開の大地への招待 ― くりこみ可能性の判定条件」でした。
⇒ 『この定理が美しい』についてのブログ記事
科学博物館の情報誌らしく、「翡翠コレクション」の記事や「春の草花の観察方法」の記事もあり、楽しく読みました。
国立科学博物館の友の会会員や賛助会員の方々には無料で配られているそうですが、一部の書店や博物館のウェブページからも購入できるそうです。
⇒ 『milsil』 ウェブページ
国立科学博物館の売店にも置いてあるそうなので、よろしければご覧ください。


by planckscale
| 2013-03-14 15:00