2013年 03月 20日
ケック 20、クェーサー 50、プレスキル 60 |

まず、Caltechとカリフォルニア大学が共同で運営しているケック天文台の完成20周年記念。先々週、Caltechでも記念のシンポジウムがありました。
口径10メートルを単一の鏡で実現するのは難しいため、ケック望遠鏡は正六角形の鏡を36枚繋いで作られています。斬新なアイデアでしたので、実証される前に寄付を決めたケック財団は勇気があったと思います。
1台目の望遠鏡を建設中に、ハワード・ケックさんがCaltechを訪問し、副学長や天文学者と昼食中に、
「1台作ってノウハウを蓄積したのだから、もう1台作るのは簡単なはずだ。もう1台あったら何ができるのか。」
と聞かれたのだそうです。天文学者たちが、2台の望遠鏡を組み合わせることで、性能が飛躍的にあがる事を説明すると、その場で2台目の建設が決まりました。
この望遠鏡は、この20年の間に、宇宙の大規模構造の解明や太陽系外地球型惑星発見などに大きな成果をあげました。

拙著『重力とは何か』にも書きましたが、クェーサーは、私が小学生時代に読んだ天文学の入門書では「謎の天体」とされていました。銀河全体に匹敵するほど強い光を発しているのに、銀河のような広がりがなく、ひとつの星のような点にしか見えないからです。
Caltechのマーティン・シュミットさんは1963年に、クェーサーが地球から20億光年も離れていることを突き止めます。その後の研究で、クェーサーは銀河の中心にある超巨大ブラックホールであることがわかりました。この発見により、私たちの宇宙の理解は飛躍的に拡がりました。
先週には、Caltechの理論物理学者ジョン・プレスキルさんの60歳の誕生日をお祝いするシンポジウムもありました。
プレスキルさんは素粒子論を専門とされていましたが、90年代の初めにブラックホールの情報問題の研究を通じて、量子情報理論に興味を持ち、2000年の初めに量子情報についての研究所を立ち上げました。また、物性理論や量子光学にも深い造詣を持っていらっしゃいます。
そのため、シンポジウムでは、物理学や情報科学のさまざまの分野の講演を聞くことができ、プレスキルさんの影響力の大きさを感じました。
プレスキルさんは学生や研究員など後進の指導にも力を尽くされたので、シンポジウムのパーティでは心のこもったお祝いのスピーチが続きました。また、ビートルズの「レット・イット・ビー」の替え歌でプレスキルさんの功績を讃えたのも、楽しい趣向でした。
"Sixty years of wisdom, Johnny P."


by planckscale
| 2013-03-20 08:40