2013年 03月 25日
宇宙の標準模型 |
先週はプランク衛星による宇宙マイクロ波背景輻射の観測結果の第1回の発表がありました。
左の写真は、ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙の一面。空港のラウンジで見ました。ニューヨーク・タイムズ紙でも一面トップのあつかいでした。
プランク衛星は4年前の5月に打ち上げられました。そのときのブログ記事はこちら。
⇒ あと一週間で打ち上げ
⇒ 打ち上げ成功
打ち上げの直前に、プランク計画のリーダーの1人のアンドリュー・ラングさんに、プランクの観測結果はいつ頃分かるのかとお聞きしたら、「君たちが見れるのは3年先だろうね、ははは」と言われたという話を書きましたが、3年ではなく4年かかりました。
ラングさんは、2010年にお亡くなりになって、この結果を見ていただくことができなかったことが残念です。
⇒ ラングさんの訃報
「素粒子の標準模型」はヒッグス粒子の発見によって完成しましたが、プランク衛星の観測は「宇宙の標準模型」の重要な検証となりました。
「宇宙の標準模型」とは、ビッグバン以来の宇宙の膨張を宇宙項、冷たい暗黒物質と、通常の物質の3つから説明するものです。プランク衛星の観測結果は、この模型で精密に説明できました。
たとえば、宇宙の年齢が138.2億年であると決まりました。20年前には、宇宙の年齢が天文学者によって2倍も違っていたことからすると、4桁の精度で年齢が決まったことは大きな進歩です。
また、これまで暗黒エネルギーや暗黒物質の量は、宇宙マイクロ波背景輻射をそのほかの観測結果と組み合わせて決めていましたが、今回は宇宙マイクロ波背景輻射の観測だけから決定できたのも画期的です。暗黒エネルギーや暗黒物質があると、重力レンズ効果でマイクロ波背景輻射も歪むので、その効果を計算に入れることで、データからさらに情報を引き出すことができたのです。
プランク衛星以前の観測では、宇宙の暗黒エネルギー、暗黒物質、通常の物質の比は、72.8パーセント、22.7パーセント、4.5パーセントとされていました。これは、プランク衛星の観測結果によって、68.3パーセント、26.8パーセント、4.9パーセントと改定されました。
プランク衛星での観測結果とそれ以前の観測とで暗黒エネルギーの量が変わったのは、違う年代の宇宙を観測しているからかもしれません。もしこの違いが誤差でなく物理的に意味のある違いだということになると、暗黒エネルギーは宇宙項ではなく、なにか時間的に変化するものである可能性も考えられます。
今回の結果は、インフレーション模型の予言ともうまくあうものだと言われています。特に、マイクロ波輻射の相関からは、インフレーションの時代に一種類のインフラトンの値がゆっくり変化していく最も簡単な模型(いわゆるスローロール模型)が支持されているようです。
インフレーション模型の予言とさらにつき合わせるには、マイクロ波輻射の偏光の情報も重要です。今回は偏光についての観測結果の発表はありませんでしたが、データを解析しているところだそうで、今後の発表が楽しみです。
左の写真は、ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙の一面。空港のラウンジで見ました。ニューヨーク・タイムズ紙でも一面トップのあつかいでした。
プランク衛星は4年前の5月に打ち上げられました。そのときのブログ記事はこちら。
⇒ あと一週間で打ち上げ
⇒ 打ち上げ成功
打ち上げの直前に、プランク計画のリーダーの1人のアンドリュー・ラングさんに、プランクの観測結果はいつ頃分かるのかとお聞きしたら、「君たちが見れるのは3年先だろうね、ははは」と言われたという話を書きましたが、3年ではなく4年かかりました。
ラングさんは、2010年にお亡くなりになって、この結果を見ていただくことができなかったことが残念です。
⇒ ラングさんの訃報
「素粒子の標準模型」はヒッグス粒子の発見によって完成しましたが、プランク衛星の観測は「宇宙の標準模型」の重要な検証となりました。
「宇宙の標準模型」とは、ビッグバン以来の宇宙の膨張を宇宙項、冷たい暗黒物質と、通常の物質の3つから説明するものです。プランク衛星の観測結果は、この模型で精密に説明できました。
たとえば、宇宙の年齢が138.2億年であると決まりました。20年前には、宇宙の年齢が天文学者によって2倍も違っていたことからすると、4桁の精度で年齢が決まったことは大きな進歩です。
また、これまで暗黒エネルギーや暗黒物質の量は、宇宙マイクロ波背景輻射をそのほかの観測結果と組み合わせて決めていましたが、今回は宇宙マイクロ波背景輻射の観測だけから決定できたのも画期的です。暗黒エネルギーや暗黒物質があると、重力レンズ効果でマイクロ波背景輻射も歪むので、その効果を計算に入れることで、データからさらに情報を引き出すことができたのです。
プランク衛星以前の観測では、宇宙の暗黒エネルギー、暗黒物質、通常の物質の比は、72.8パーセント、22.7パーセント、4.5パーセントとされていました。これは、プランク衛星の観測結果によって、68.3パーセント、26.8パーセント、4.9パーセントと改定されました。
プランク衛星での観測結果とそれ以前の観測とで暗黒エネルギーの量が変わったのは、違う年代の宇宙を観測しているからかもしれません。もしこの違いが誤差でなく物理的に意味のある違いだということになると、暗黒エネルギーは宇宙項ではなく、なにか時間的に変化するものである可能性も考えられます。
今回の結果は、インフレーション模型の予言ともうまくあうものだと言われています。特に、マイクロ波輻射の相関からは、インフレーションの時代に一種類のインフラトンの値がゆっくり変化していく最も簡単な模型(いわゆるスローロール模型)が支持されているようです。
インフレーション模型の予言とさらにつき合わせるには、マイクロ波輻射の偏光の情報も重要です。今回は偏光についての観測結果の発表はありませんでしたが、データを解析しているところだそうで、今後の発表が楽しみです。
by planckscale
| 2013-03-25 06:05