2013年 04月 18日
ホーキングさん |
スティーブン・ホーキングさんは、毎年1-2ヶ月Caltechに滞在されます。昨日はホーキングさんの一般講演がありました。Caltechのキップ・ソーンさんとジョン・プレスキルさんは、ブラックホールのさまざまな性質について、ホーキングさんと「賭け」をしています。
1.はくちょう座X1はブラックホールか。
2.重力崩壊で裸の特異点は生ずるか。
3.一般の初期条件のもとで、重力崩壊で裸の特異点は生ずるか。
4.ブラックホールの蒸発機構で情報は失われるか。
ホーキングさんの講演に先立つ晩餐会では、これらの賭けの意味について、ソーンさんとプレスキルさんから解説がありました。
食事の前に供されたカクテルは「ブラックホールの防火壁」にちなんだもの。食後のデザートは太陽系をかたどるなど、凝った趣向の晩餐会でした。
食事の後で、ベックマン講堂に向かうと、長い列ができていました。5000名ほどの聴衆が集まったようで、1100名収容の講堂には入りません。これは想定内だったので、別の講義室にビデオ配信するほか、講堂の前の芝生でも大きなスクリーンで講演の同時中継が見られるようになっていました。芝生の横には、コーヒーやデザートを供するスタンドも出ていて、パーティのような雰囲気になってました。
講演のタイトルは「宇宙の始まり」。
ホーキングさんが1960年代に証明した特異点定理は、宇宙の膨張についての観測と組み合わせることで、宇宙がビッグバンから始まったことの根拠となりました。また、ホーキングさんのブラックホールの蒸発機構は、初期宇宙のインフレーション理論と組み合わせることで、宇宙マイクロ波背景輻射のゆらぎを予言しました。このゆらぎは、その後にCOBE衛星実験で観測され、この観測は2006年ノーベル物理学賞の対象になっています。
ホーキングさんの講演は、次のような言葉で終わりました:
「生きて研究をするにはすばらしい時代でした。私たちの宇宙の理解は、この50年の間に大きく変わり、それに少しでも貢献できたことは幸せです。自然界の基本粒子の集まりに過ぎない私たち人間が、宇宙や自分たちを支配する自然界の法則を、ここまで理解できるようになったというのは、すばらしい勝利です。」
講演の後には、学生からあらかじめ提出された質問のいくつかについて、ホーキングさんが答えました。
質問: 「ブラックホールの防火壁についてどう思いますか」
答え: 「次の3つの理由で、防火壁は存在しないと思います。1.事象の地平線の位置は、局所的に定義されていない。将来ブラックホールに物質が投げ込まれたら、事象の地平線の過去における場所も変わる。将来のことを予期して防火壁の位置が決まっているとは考えがたい。2.エネルギー・運動量テンソルの値を計算すると、事象の地平線でも有限である。3.事象の地平線の定義はCPT不変ではないので、事象の地平線で特別なことが起きるとCPT定理に矛盾する。」
質問: 「私たちの宇宙は、別な宇宙の中のブラックホールとして生じたのではないでしょうか」
答え: 「もしそのようなことが起きたら、ブラックホールの蒸発過程で情報が失われないという事実に反するので、ありえない。」
―― 上の4番目の「賭け」を引用したものです。
質問: 「脳波によって機械を直接コントロールできるようになりつつあります。これが可能になったら、車椅子のほかにどのような機械をコントロールしたいですか」
答え: 「機械よりも、人間をコントロールしてみたいです(笑)。うまくいっていないので、私の脳波は弱いのかもしれません。」
さて、ホーキングさんの一般講演の話しの後で恐縮ですが、私の一般講演についてお知らせします。
朝日カルチャーセンターの大阪中之島教室で5月11日(土)に開講する講座「重力とは何か」のほかに、
翌月の6月22日(土)には、新宿教室で「超弦理論」と題した講座を開きます。
13:00から17:00までの4時間で、「超弦理論ではなぜ空間の次元が9次元であると考えるのか」など、一般向けの解説では避けて通っているところについても、説明を試みる予定です。
⇒ 朝日カルチャーセンター講座 「超弦理論」
by planckscale
| 2013-04-18 13:42









