2013年 05月 02日
文部科学副大臣のCaltech訪問 |

昨日は、谷川弥一文部科学副大臣がCaltechを訪問にされました。午前中はJPLを視察され、Caltechの教員会館での昼食会の後、キャンパスの研究施設の視察。
その後は、私の研究室にいらして、私と下條信輔教授との懇談。
最後はCaltechの日本人大学生や博士研究員を交えての懇談になりました。
文部科学省の高等教育局からは、日本の教育の将来について、
1.日本人留学を促進するためのインセンティブ、阻害要因
2.優秀な留学生の日本への呼び込み、
3.日本の大学の国際化及び人材育成、人材獲得
4. 日米の様々な面における差異
などについて、経験にもとづいて率直な話と問題提起をしてほしいという依頼を受けました。
学生の皆さんから盛んに意見が出て、副大臣や文部科学省の皆さんと議論になり、予定を1時間以上超過することになりました。
私は、カリフォルニアの大学で教鞭をとるようになって20年近くになりますが、日本の大学生に比べて、米国の大学生が、平均してよく勉強をするのはなぜだろうかと思っていました。
ひとつの理由は、米国では大学での成績が、その後の就職や進学(医科や法科大学院、ビジネススクール、研究大学院など)に大きく影響するからかもしれません。
日本では、就職のときに大学での成績はあまり重視されないようです。国家公務員試験でも、大学の成績はあまり見ないという話をお聞きしました。
企業が入社試験で成績を軽視する ⇒ 学生が大学で勉強しない ⇒ 大学教育が劣化する ⇒ 企業が大学教育を信用しない
という悪循環があるのかもしれません。これを断ち切るにはどうしたらよいのでしょうか。
米国では、大学教育は、想定外の問題に直面したときに、自分の頭で考えて解決する能力を鍛える場であるという評価が、社会の中で定着していると思います。
教授だけとの懇談会や、その後の日本人留学生も交えた懇談会で取り上げられた話題としては、
◎ Caltechの研究・教育戦略
◎ 教授人事や処遇
◎ 海外の優秀な研究者を日本に引き付ける上での障害
◎ なぜ、日本人の海外留学者が減少しているのか
◎ 日本の若手研究者の処遇の問題や、研究者のキャリアパスの日米比較
◎ 講座制、教授会の権限など、大学内行政の日米比較
◎ 米国大学の大学入試
◎ 東京大学や京都大学での、推薦入試の試みについて
◎ 大規模公開オンライン講座の高等教育へのインパクト
◎ 英語教育
などがありました。
その中には、学術振興会の留学生奨学金の決定時期のために、米国の大学院入試で日本人留学生が不利になるという指摘もありました。
私はカリフォルニア大学バークレイ校やCaltechで大学院入試委員を務めたことがありますが、学術振興会のように名の通った機関からの奨学金を獲得した志願者は、入試で有利になります。米国の大学院入試の判定は毎年1-2月に行いますが、日本では会計年度のため奨学金の交付決定が4月以降になるということで、せっかく日本政府が留学生に奨学金をつけても、それがよりよい大学院に学生を送ることに役立たないと言う問題があります。留学生への奨学金が11月ごろに決まれば、大学院入試の合否判定にも効きます。
細かいことですが、このようなことでも改善していくことで、留学の効果をあげることにつながると思います。


by planckscale
| 2013-05-02 16:14