2013年 08月 10日
アスペン、その7: ザギエさんの2つの問題 |

先週末には、プッチーニの1幕もの3部作のうち、『修道女アンジェリカ』と『ジャンニ・スキッキ』を観ました。
『アンジェリカ』(上の写真)は、暗い話で周りのご婦人方には不評でしたが、曲は美しいと思いました。『ジャンニ・スキッキ』(下の写真)はこれと対照的に、大笑いしながら観ました。
マイケル・グリーンさんと話をしていたら、数学者のドン・ザギエさんの話題になりました。
右下の写真は、昨年の夏にドイツで開かれた弦理論と数学の国際会議String-Math 2012での、ザギエさんの講演の様子です。

グリーンさんは、ザギエさんから瞬発力を見る問題を出されたといって、私にも、次の2つの問題の各々に「聞いて10秒」で答えなさいと出題されました。
ザギエさんの問題その1:
素数の逆数の和は無限大です。では、人類がこれまでに発見した素数の逆数の和はいくつぐらいしょうか。
ザギエさんの問題その2:
スイカの重さの99%が水分だったとします。1日置いてはかったら、水分が蒸発して、98%が水分になっていました。スイカの全体の重さはどれだけ減ったでしょうか。
何とか2問とも、各々10秒以内に答えることができて、合格だといわれました。
以下に答えを書きますが、読む前に考えてみてください。
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問題その1の解答:
素数の逆数の和というのは、1/2 + 1/3 + 1/5 + 1/7 + 1/11 + 1/13 + 1/17 + 1/19 + 1/23 + 1/29 + ... とたしていくということで、これが無限大になることはオイラーによって証明されています。
ガウスが15歳のときに予想して、その100年後に証明された素数定理によると、自然数Nのあたりには、およそ log N に1つの割で素数があります(ここで log と書いているのは自然対数)。
そうすると、N以下の素数の逆数の和は、およそ
Σ_{n < N} (n log n)^{-1}
で、これはおよそ log ( log (N) ) になります。
対数が2回かかっているのがミソで、Nが大きくなっても、あまり増えません。
たとえば、log ( log (100) ) は約1.5ですが、log ( log (10^10) ) でも約3.1にしかなりません。log ( log (10^10^10) )でも約24です。
log ( log (N) )は、Nが大きくなってもあまり増えないので、「人類がこれまでに発見した素数」がどれだけあるかを正確に知らなくても答えられるというわけです。
たとえば、現在知られている最大の素数というのは、およそ1千万桁なので、10^10^7。そうすると、log ( log (10^10^7 ) ) で約17。しかし、これはメルセンヌ数という特別に見つけやすい素数なので、それまでの素数が全部わかっているわけではありません。
そこで、「たぶん5から10ぐらいじゃないですか」と答えたら合格でした。
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問題その2の解答:
私はこの手の問題が苦手なので、「えーと、えーと、水以外の部分が1パーセントから2パーセントと倍になったので、全体の重さは半分になったのではないですか」と答えたら正解でした。
たとえば、最初にスイカが1キログラムあったとしたら、水分は990グラム。残りの部分は10グラム。全体が半分になると、500グラムで、水以外は10グラムのままなので、水分は490グラム。これは500グラムの98パーセントというわけです。
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このような口頭試問を受けることになった理由については、後日ブログ記事に書きます。


by planckscale
| 2013-08-10 14:15