2013年 10月 08日
2013年度ノーベル物理学賞 |
2013年度のノーベル物理学賞は、「素粒子の質量の起源の理解に貢献し、予想された素粒子のCERNのLHCのATLASとCMS実験における発見によって検証された機構の理論的発見」に対して、ピーター・ヒッグスさんとフランソワ・アングレールさんに授賞されることが発表されました。おめでとうございます。
ヒッグス粒子を発見したCERNのLHC実験施設を家族でご案内いただいたときの写真(右)と、ピーター・ヒッグスさんとイタリアのシシリー島での会議でお会いしたときの写真(左)を貼っておきます。
私は、朝日新聞編集部からWEBRONZAに受賞者予想を書くように依頼され、これが「本命である」と書きました。また、
「ヒッグス粒子の予言は、南部陽一郎の自発的対称性の破れの理論(2008年ノーベル賞受賞)に始まる。1964年に3つのグループが独立に、この理論を素粒子論に応用できるようにした。これを最初に発表したのが、ロバート・ブラウトとフランソワ・アングレール。この論文が査読雑誌に掲載されたのとほぼ同時に、同じ雑誌に論文を投稿したのがピーター・ヒッグス。論文を投稿しようとしていたまさにそのときに、この2本の論文を受け取ってしまったというのがジェラルド・グラニクル、カール・ハーゲンとトーマス・キッブルである。これらの論文の主題は南部の理論を素粒子論にあてはめることであり、「ヒッグス粒子」の予言を明確に記していたのはヒッグスの論文だけであった。」
「すでに亡くなっているブラウト以外の5人はいずれもノーベル賞の候補になりうるが、ノーベル賞は1回に3人までという鉄則があるので、全員が受賞することはない。ヒッグス粒子を予言したヒッグスが受賞するのは順当であるが、残りをどうするか。もう1人とすると最初に論文を発表したアングレール、さらに1人付け加えるならその後に自発的対称性の理論をさらに発展させたキッブルか。選考委員会も頭を悩ませるところだろう。」
とも書いて、ほぼその通りになりました。
⇒ WEBRONZAの記事
昨年のヒッグス粒子の発見によって、素粒子の標準模型が完成しました。素粒子の間の力の働き方を説明するために、半世紀前にヒッグスさんたちが紙と鉛筆で予言した粒子が、CERNという巨大実験施設で発見されたことは、自然には合理的な法則があり、それは人知によって解き明かすことができるという科学者の信念を裏付けるものでした。しかし、自然の基本法則の探求は道半ばです。ヒッグス粒子の発見によって完成された素粒子の標準模型は宇宙の5パーセントしか説明できず、暗黒物質や暗黒エネルギーからなるとされる残りの95パーセントにも、発見されるべき合理的な法則があるはずです。また、素粒子の標準模型には重力が含まれておらず、素粒子の世界と重力の世界を統合する理論の構築と検証はこれからの課題です。今回のノーベル賞受賞によって素粒子物理学は一つの章が完結し、自然界のより深い姿を明らかにする新しい章に入ったと言えます。
今回のノーベル物理学賞の対象となった「ヒッグス粒子の予言」の意義についてお知りになりたい方は、拙著 『強い力と弱い力』 (幻冬舎新書)をご覧ください。
この本についての紹介記事を張っておきます:
⇒ 強い力と弱い力 : 美女と野獣
⇒ 『強い力と弱い力-ヒッグス粒子が宇宙にかけた魔法を解く』
⇒ ヒッグス粒子発見の本当の意義
また、拙著 『超弦理論入門』 (ブルーバックス)でも、第5章「力の統一原理」とコラム記事「金本位制とヒッグス粒子」で、ヒッグス粒子発見の意義について書きましたので、そちらもあわせてお読みになるとさらに理解が深まると思います。
by planckscale
| 2013-10-08 19:49









