2014年 03月 26日
原始の重力波 その3 |
先週の木曜日にはCaltechで、宇宙マイクロ波のB-モード偏光を観測して「インフレーション宇宙論」の直接的証拠を発見したBICEP2望遠鏡実験のリーダーであるジェームス・ボックさんの講演会がありました。
上のYoutubeビデオがその講演会のときのものです。
講演会の後には、BICEP/BICEP2チームと、BICEP/BICEP2望遠鏡を支援してくださってきたムーア財団やケック財団の方々をご招待して、お祝いの夕食会を開きました。私は望遠鏡の検出器を製作したJPLの技術者の方々と一緒のテーブルだったのですが、「今回の検出器は技術的な困難を幾つも乗越えて完成させたものなので、それだけも技術者としてやりがいのあるプロジェクトだったが、それが宇宙の最初の1兆×1兆×1兆分の1秒の様子を観るのに使われるとは」
と感動を語っていらっしゃいました。
左上は、お祝いのパーティの後で撮ったBICEP/BICEP2チームの集合写真です。おめでとうございます。
今日水曜日は、京都大学の基礎物理学研究所に行く機会があって、ドイツのマックス・プランク宇宙物理学研究所の所長のひとりをされている小松英一郎さんによる、BICEP2観測についてのセミナーを聞きました(右の写真です)。この観測で検出された偏光が初期宇宙のインフレーションを起源としたものである確信するには、まだ追試が必要なようです。このBICEP2の発表の意義について、朝日新聞のWEBRONZAに記事を書きました。編集部の方が、「宇宙インフレーション理論の『最初の直接証拠』発見に私が興奮した理由」というタイトルをつけてくださいました。
この記事では、
「これを聞いて、私はとてもワクワクした。宇宙の誕生直後の様子がわかるようになっただけでも素晴らしいが、この発見は、自然界の基本法則の探究という物理学の大きなテーマを、次のステージに進めるものでもある。また、私の研究対象である超弦理論とも深いかかわりがある。」
とはじめ、一昨年のヒッグス粒子の発見と比較して、
「理論的予言が長年たって検証されたという点では共通する二つだが、科学史においては、今回の発見が正しければ、ヒッグス粒子の発見よりももっと重大な事件になると思う。いずれも偉大な業績であり、その重要度を比較するなどもってのほかとお叱りを受けるかもしれないが、そのように思う理由を説明しよう。」
と続けました。
⇒ この先はWEBRONZAのウェブページでご覧ください。
ところで、昨年の8月末に講談社ブルーバックスから上梓した拙著『超弦理論入門』は、重版第6刷が決まりました。多くの方にお読みいただけて嬉しいです。この本の最後の章では、超弦理論の実験的検証の可能性として、宇宙背景マイクロ波輻射の偏光の観測や、原始の重力波の検出についても書きました。出版してから、わずか半年程度で、このような観測が実現するとは驚きです。BICEP2の発見は、超弦理論の実験的検証にも道筋がついたと思います。
今回の発表が正しければ、つい最近まで検証不可能ではないかといわれていたインフレーション理論。その最も重要な予言が確認されたことになります。これは、理論物理学者として大いに勇気付けられることです。
BICEP2の発表で幕を開けた初期宇宙や量子重力の効果の実験的研究は、これから大きく発展しそうです。
by planckscale
| 2014-03-26 15:58









