2014年 09月 20日
講談社三賞授賞式 |
先月アスペンから帰ってから、忙しくしていて、ブログの更新を怠っていました。久しぶりにアカウントを開けてみたら、たくさんコメントをいただいていて、ご返事を差し上げないで失礼しました。
今週の金曜日には、丸の内の東京會舘で、講談社ノンフィクション賞、エッセイ賞、科学出版賞の合同授賞式がありました。私は、ブルーバックスの『超弦理論入門』に対して、科学出版賞を受賞しました。
せっかくの機会でしたので、授賞式の前に、ノンフィクション賞を受賞された清武英利さんの『しんがり』と、エッセイ賞を受賞された末井昭さんの『自殺』を読んでおきました。
『しんがり』は、1997年に山一證券が自主廃業に追い込まれたときに、会社に最後までとどまって真相究明と清算業務を続けた社員の話です。このときには、私はカリフォルニア大学バークレイ校の教授をしていて、詳しい話を知らなかったので、こんなことがおきていたのかと平成史の復習になりました。会社の破綻という不幸な題材ですが、すがすがしい読了感で、人生の満足感とはなにかを考えさせる本でした。
『自殺』は、著者ご自身の生い立ちや波乱万丈の生涯のほか、富士山麓の樹海を見回る人のインタビュー、秋田県が人口当たり自殺者が全国一なのはなぜかなど、私の全く知らなかった世界の話が盛り沢山で、興味深く拝読しました。
高校の恩師、高校や大学の同級生から、研究や科学アウトリーチでお世話になっている方々もご参加くださり、楽しい式でした。
授賞式での私のスピーチの原稿を再録しておきます:
自分自身の研究について本を書き、多くの方に読んでいただき、賞までいただいて、ありがたいことだと思っています。また、ほかならぬ小林誠さんから素晴らしい選評をいただき、感謝に堪えません。
私はアメリカの大学に勤務していて、職業は英語ではプロフェッサーといいます。これは本来はラテン語で自らの信じることを公に述べるという意味でした。たとえば、カソリック教会でキリスト者になる時に行う信仰告白の「告白」は、プロフェスと言います。ところが、19世紀のドイツで近代の大学制度が整備されると、今まで誰も知らなかった真実を発見し、その新しい知識を次の世代に伝える者のことを、プロフェッサーと呼ぶようになりました。ですから、自分の研究を、この本のような科学解説書にして公に述べ、人類の将来を担う若い世代に科学の素晴らしさを伝えることは、私の職務の一部と考えています。
私は普段は数学の言葉を使って研究をしているので、一般の方々に読んでいただく解説書では、横書きの数式を縦書きの日本語に起すことになります。この作業にご協力いただいた岡田仁志さんと山岸浩史さんのおかげで、ブルーバックス創刊50周年にして初めて、表紙のタイトルまでもが縦書きの本になりました。挿絵についての私の細かい注文にも粘り強く対応してくださったイラストレーターの齋藤ひさのさん、ありがとうございました。また、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構の春山富義事務長や中村健蔵前事務長をはじめとするスタッフの方々には、私どもの研究や科学アウトリーチの推進のためにご尽力いただいていることに対し、この場をお借りしてお礼を申し上げます。
この本のテーマである超弦理論は、まだ仮説の段階にあります。しかし、次の十年の間に、日本や世界の各地で計画されているさまざまな素粒子実験や宇宙の観測によって、この理論の検証も可能になると期待しています。これが達成でき、超弦理論が自然界の究極の基本法則として確立された時には、また、これを社会にプロフェスする科学解説書を書きたいと思っていますので、引き続きよろしくお願いいたします。
本日は、誠にありがとうございました。
今週の金曜日には、丸の内の東京會舘で、講談社ノンフィクション賞、エッセイ賞、科学出版賞の合同授賞式がありました。私は、ブルーバックスの『超弦理論入門』に対して、科学出版賞を受賞しました。せっかくの機会でしたので、授賞式の前に、ノンフィクション賞を受賞された清武英利さんの『しんがり』と、エッセイ賞を受賞された末井昭さんの『自殺』を読んでおきました。
『しんがり』は、1997年に山一證券が自主廃業に追い込まれたときに、会社に最後までとどまって真相究明と清算業務を続けた社員の話です。このときには、私はカリフォルニア大学バークレイ校の教授をしていて、詳しい話を知らなかったので、こんなことがおきていたのかと平成史の復習になりました。会社の破綻という不幸な題材ですが、すがすがしい読了感で、人生の満足感とはなにかを考えさせる本でした。
『自殺』は、著者ご自身の生い立ちや波乱万丈の生涯のほか、富士山麓の樹海を見回る人のインタビュー、秋田県が人口当たり自殺者が全国一なのはなぜかなど、私の全く知らなかった世界の話が盛り沢山で、興味深く拝読しました。
高校の恩師、高校や大学の同級生から、研究や科学アウトリーチでお世話になっている方々もご参加くださり、楽しい式でした。
授賞式での私のスピーチの原稿を再録しておきます:
自分自身の研究について本を書き、多くの方に読んでいただき、賞までいただいて、ありがたいことだと思っています。また、ほかならぬ小林誠さんから素晴らしい選評をいただき、感謝に堪えません。
私はアメリカの大学に勤務していて、職業は英語ではプロフェッサーといいます。これは本来はラテン語で自らの信じることを公に述べるという意味でした。たとえば、カソリック教会でキリスト者になる時に行う信仰告白の「告白」は、プロフェスと言います。ところが、19世紀のドイツで近代の大学制度が整備されると、今まで誰も知らなかった真実を発見し、その新しい知識を次の世代に伝える者のことを、プロフェッサーと呼ぶようになりました。ですから、自分の研究を、この本のような科学解説書にして公に述べ、人類の将来を担う若い世代に科学の素晴らしさを伝えることは、私の職務の一部と考えています。
私は普段は数学の言葉を使って研究をしているので、一般の方々に読んでいただく解説書では、横書きの数式を縦書きの日本語に起すことになります。この作業にご協力いただいた岡田仁志さんと山岸浩史さんのおかげで、ブルーバックス創刊50周年にして初めて、表紙のタイトルまでもが縦書きの本になりました。挿絵についての私の細かい注文にも粘り強く対応してくださったイラストレーターの齋藤ひさのさん、ありがとうございました。また、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構の春山富義事務長や中村健蔵前事務長をはじめとするスタッフの方々には、私どもの研究や科学アウトリーチの推進のためにご尽力いただいていることに対し、この場をお借りしてお礼を申し上げます。
この本のテーマである超弦理論は、まだ仮説の段階にあります。しかし、次の十年の間に、日本や世界の各地で計画されているさまざまな素粒子実験や宇宙の観測によって、この理論の検証も可能になると期待しています。これが達成でき、超弦理論が自然界の究極の基本法則として確立された時には、また、これを社会にプロフェスする科学解説書を書きたいと思っていますので、引き続きよろしくお願いいたします。
本日は、誠にありがとうございました。
by planckscale
| 2014-09-20 21:22









