2014年 12月 14日
大いなる希望としての科学 |
11月15日に千葉県の市原湖畔美術館で開かれた、小説家の大江健三郎さん、建築家の原広司さん、評論家の三浦雅士さんとの座談会の記録が、岩波の雑誌 『世界』 の1月号に掲載されました。雑誌そのものは、編集部からエアメールで送っていただいているところなので、拝見していません。私たちの座談会の記事は、「大いなる希望としての科学」というタイトルで、岩波のウェブページでは次のように紹介されています:
「市原湖畔美術館で始まった「HIROSHI HARA: WALLPAPERS」展では、建築家の原広司氏が、古代ギリシア時代から現代まで、2500年におよぶ人類の歴史のなかで編み出された様ざまな書物をみずから書き写し、「壁紙」として展示している」
「デカルトやニュートンを源とする「均質空間」に対してきた原氏は、素粒子物理学者・大栗博司氏の著作に大きな示唆を得て壁紙を構想したという」
「大栗氏のいう「空間とは幻想である」とは、一体何を意味しているのか? 「暗黒物質」「暗黒エネルギー」とは一体どのような存在なのか? ──文学、建築と、異なる背景をもつ登壇者たちが、最先端の科学にふれ、「新たな世界像」をめぐって語りあう」
座談会の記事の校正刷りを拝見したところ、記事のタイトルは、大江健三郎さんが最後に、第二次世界大戦に日本に蔓延していた反科学主義を批判しながら、
「今日の話し合いのような場が日本中で多く持たれたら、科学の本当の力を信じる態度が再建されるのではないか」
「いま新しい科学の状態について大栗さんが話され、その研究に多くの日本人も参加していることを示されるのに、私らが期待をこめて聞き入っている。とても、いい空間が出来上がっていると思いました」
とおっしゃっていたことを反映しているのだと思います。
よろしければ、ご覧ください。
さて先週は、私が所長をしているCaltechのウォルター・バーク理論物理学研究所の主催で、「散乱振幅のグラスマン幾何学」と題した国際会議が開かれました。素粒子の間の相互作用を記述する場の量子論の計算では、Caltechのリチャード・ファインマンが開発したファインマン図を使った方法が主要な方法として今日まで使われています。Caltechの私の研究室でも、このファインマンの業績を讃えるために、数年前、ファインマン図をモチーフにした壁画を作りました。
⇒ 「ファインマンの壁」
ところが、この10年ほどの間に、ある特別な種類の場の量子論については、全く別の計算方法があって、それを使うとより効率的に計算できる場合があることがわかり、注目されています。今回の研究会はそれに焦点を当てたもので、グラスマン多様体の幾何学的性質を使って、散乱振幅を計算しようというものです。
会議の期間中には、この分野の指導的研究者のひとりである、プリンストンの高等研究所教授のニマ・アルカニ‐ハメッドさんによる一般講演会も開催しました。題名は「21世紀の時空間と量子力学」。また、会議の開催中には、科学ライターのグラハム・ファーメロさんが、会議の参加者をインタビューするためにCaltechに滞在されていました。この分野を含む最近の理論物理学の動向に関する一般向けの本を書かれる予定だそうです。
ファーメロさんは、20世紀の偉大な理論物理学者ポール・ディラックさんの伝記を出版されて間もないので、この伝記の取材でわかった新事実について、物理学教室の談話会でお話をしていただきました。当日は、ポール・ディラックさんのお嬢さんのモニカ・ディラックさんもいらして、談話会の後での質疑にもご参加くださいました。
左の写真は、談話会の後の夕食会の様子です。私の隣がモニカ・ディラックさん。その隣が、グラハム・フファーメロさんです。
by planckscale
| 2014-12-14 15:29









