2015年 04月 17日
モック保形性と月影 |
上の式は、私が1989年に東京大学に提出した博士論文から取りました。この式の係数、90、462、1540、4554、11592などは、超弦理論をK3と呼ばれる空間にコンパクト化したときに現れる粒子状態の数で、私の博士論文の成果のひとつは、これらの数を計算する方法を開発したことでした。
しかし、これらの数の背景にある基本原理は、長い間わかりませんでした。
それからちょうど20年経った2009年に、江口徹さんと立川裕二さんとアスペン物理学センターで話をしているときに、これらの数字を2で割った、45、231、770、2277、5796などが、マチュー群と呼ばれる有限群の中の一番大きなM24の既約表現の次元になっていることに、3人で気がつきました。
私たちの発見は、「マチュー月影」と呼ばれて、その後いろいろな方面から研究されるようになりました。
月影というのは、英語では "Moonshine" といいますが、夜、池の表面に映った月の光、それから転じて、「実体のない反映」、さらには、「ばかげたこと」という意味になったのだそうです。そもそもは、クラインのj‐函数を、上の式のように q のべきで展開したときの係数が、モンスターと呼ばれる有限群の表現の次元になっていることをジョン・マッカイさんから聞いたジョン・コンウェイさんが、「とんでもない」という意味で "Moonshine!" と応じたのが、この呼び名の由来です。j-函数についての現象は、「モンスター月影」と呼ばれるようになったので、私たちが発見した現象も「マチュー月影」と呼ばれるようになりました。
もともとの「モンスター月影」の舞台となったj‐函数は保形性を持っていますが、「マチュー月影」の舞台になるのは、ラマヌジャンが考えた「モック・モジュラー(保形)形式」でした。
今回の会議のタイトルが 「モック保形性と月影」 となっているのは、そのようなわけでした。
モック・モジュラー形式については、先日ケンブリッジ大学を訪問し、「ラマヌジャンの失われたノート」を拝見したときのブログ記事に書きました。
ペリメータ研究所を訪問するのは、10年ぶりです。トロント市から車で1時間ぐらいのところで、冬の気候は厳しいと聞いていますが、建物の中はとても快適にできています。左の写真は、1階の広場で、左奥がレストランになっています。
by PlanckScale
| 2015-04-17 07:20









