2015年 10月 26日
日本の理論と実験が解いた太陽ニュートリノの謎 |
今学期はプリンストンの高等研究所でサバティカルをしているので、できる限り出張をしないようにしているのですが、どうしても避けられない業務もあります。
先々週の始めには、ソルベー研究所の諮問委員会のために、ベルギーのブリュッセルに行きました。上の写真は、ブリュッセルのグラン=プラスの夜景です。
ソルベー研究所は20世紀のはじめに設立され、量子力学の創設と発展には特に重要な役割を果たしました。当時は国際会議も少なかったので、4年に1回開かれるソルベー会議は重要な機会だったようです。10年ほど前にマーク・ハノーさんが所長になってから、意欲的な活動をしているので、私も諮問委員としてお手伝いしています。
その週の後半は、ブリュッセルからボストンに飛んで、MITとハーバード大学の人たちと議論しました。
週末には、娘の通っている寄宿学校の父兄参観日があったので、その後で足を延ばして、ニューハンプシャー州のポーツマスに行ってみました。ポーツマスといえば、日露戦争の後の講和条約が結ばれた場所として有名です。左の写真は、日露の代表団が滞在したホテルです。
先週の木曜日と金曜日には、サイモンズ財団の年次総会のためにニューヨークに行きました。私は、2012年にサイモンズ研究賞をいただき、財団から研究支援を受けているので、毎年の年次総会にも参加しています。総会では、数学や物理学の様々な分野の刺激的な話題を聞くことができるので、毎年楽しみにしています。
土曜日には、ニューヨークのチェルシー地区に移転したホィットニー美術館に行ってみました。美術館のあたりは、鉄道の高架だったところを遊歩道に改造した「ハイライン」で散策できるので、楽しいです。また、近代美術館では、ピカソの彫刻展を見ました。
プリンストンは、紅葉が真っ盛りです。右の写真は高等研究所の森で撮りました。
さて、『週刊ダイヤモンド』の連載「大人のための最先端理科」、昨日発売になった10月31日号に掲載されている私の第9回の記事は、「日本の理論と実験が解いた太陽ニュートリノの謎」というタイトルです。
別な記事を用意して、すでに校正中でしたが、今年度のノーベル物理学賞が「ニュートリノが質量を持つことを示すニュートリノ振動の発見」に対して与えられるという、素晴らしいニュースが飛び込んできたので、急きょ予定を変更して、授賞対象となった発見の意義について解説しました。
授賞理由に「ニュートリノが質量を持つことを示す」とありますので、「ニュートリノに質量があることがなぜ重要か」に注目した解説記事を多く見かけます。しかし、そもそもニュートリノの種類が変わるという「振動」のプロセスが大発見でした。たとえば、ニュートリノ振動の発見によって、太陽の仕組みについての長年の謎が解明されたのです。しかも、これは、1962年に、牧二郎、中川昌美と坂田昌一が理論的に考えていた現象でしたので、今回の記事は、「日本の理論と実験が解いた太陽ニュートリノの謎」というタイトルにしました。
この『週刊ダイヤモンド』の記事は電子版でご覧いただくこともできます。
ニュートリノのさらに詳しい解説としては、たとえば拙著『強い力と弱い力』をご覧ください。ちょうど、「Kindleストア3周年記念セール」ということで、10月29日(木)まで、Kindle版が7割引きの299円になっています。
⇒ 『強い力と弱い力』 Kindle版
by PlanckScale
| 2015-10-26 10:34