2016年 02月 12日
重力波の直接観測 |

アインシュタインが重力波を予言して100周年の記念の年に、重力波の直接観測が達成され、宇宙を探求する新しい窓が開けたことになります。素晴らしいニュースです。
ブラックホール連星の合体の初観測でもあります(このビデオは、Caltechの数値計算プロジェクトが作成したものです)。
理論的に計算された重力波の波形との精密な比較がなされており、強い重力場における一般相対論の検証としても初めての例です。
LIGO は、Caltech のキップ・ソーンさんとロナルド・ドリーバーさん、MIT のライナー・ワイスさんらが中心になって、1979年に共同提案。建設計画は1992年に始まり、以来 Caltech とMIT とが運営してきました。
昨年の9月12日に観測が始まり、たった2日後の9月14日9時51分(米国東部時間)に、重力波が受信されました。

数値シミュレーションの結果と比較することで、重力波を出した2つのブラックホールの質量は、太陽の36倍と29倍。この2つが合体して、太陽の62倍の質量のブラックホールになったと見積ももられています。合体前の36+29=65は、合体後の62より大きいので、足し算が合わないようですが、その差である太陽の3倍の質量に相当する膨大なエネルギーが、重力波として放出されたということになります。驚異的なイベントです。
13億年前に発信された重力波が、光の速さで宇宙を伝わり、LIGOが観測を始めて3日目の地球にとどいたことになります。

今後、日本のKAGRAなどとの連携により、重力波天文学は大きく発展するでしょう(左の図)。
私は、文藝春秋社の『2016年の論点』に寄稿し、
「今後数年の間に重力波の観測が達成されれば、電磁波では見えなかった宇宙の姿が明らかになる。それは、私たちの世界観を、さらに大きく変えることになるだろう」
と結んでいました。それが、「数年の間」どころか、今年達成されてしまいました。
今回の重力波の直接観測についてのより詳しい解説は、朝日新聞のWEBRONZAに寄稿しました。
よろしければご覧ください。⇒ 「重力波の直接観測で宇宙の新しい窓が開いた」
40年にわたる努力でこの偉業を成し遂げた科学者や技術者の皆さんに、心からお祝いの言葉を送ります。
追伸:5年前に、LIGOのブラインド・インジェクションについてブログ記事を書いていたのを思い出しました。⇒「二重盲検法」



by PlanckScale
| 2016-02-12 03:29