2016年 05月 09日
論文2本 |
先週は、新しい論文を2本、arXivに投稿しました。
Bulk Local States and Crosscaps in Holographic CFT
この4月に立教大学の准教授に着任されたばかりの中山優さんと書いた論文です。
昨年の7月に中山さんと書いた論文、
Bulk Locality and Boundary Creating Operators、
の続きで、昨年の秋に、プリンストンの高等研究所に滞在していたころに準備を始めました。
ホログラフィー原理で、共形場の理論から、重力理論の局所的性質がどのように表れるのかを理解するのは、重要な問題です。昨年7月の論文では、重力理論の局所作用素が、共形場の理論の「クロスキャップの石橋状態」の重ね合わせで表現できることを示しました。
今回の論文では、この重ね合わせの仕方がどのように決まるのかを考察しました。
Gravitational Positive Energy Theorems from Information Inequalities
MITのポストドクトラル・フェローのニーマ・ラシュカリさん、高等研究所のポストドクトラル・フェローのジェニファー・リンさん、私のCaltechの大学院生でこれが博士論文の主題となったボグダン・ストイカさん、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学教授のマーク・ファン・ラームスドンクさんとの共著です。
重力を含む場の理論が与えられたときに、量子論として矛盾のない理論の低エネルギー有効理論として実現しているかどうかを判定する問題、いわゆる「沼地問題」を、情報理論のエントロピー不等式を使って考えました。
量子エントロピーは、量子力学の整合性から、様々な不等式を満たすこととが知られています。こうした不等式を、ホログラフィー原理を使って重力理論に翻訳し、重力理論についての条件を導こうというアイデアです。
今回の論文では、その中でも「相対エントロピーの正値性、単調増加性」が、重力理論では、準局所エネルギーの正値定理と解釈できることを示しました。エネルギーの正値定理は、重力理論の重要な性質と考えられているので、それがホログラフィー原理で対応する量子理論の整合性と結びついたのが面白いと思いました。
この論文は、一昨年の12月に書いた論文、
Locality of Gravitational Systems from Entanglement of Conformal Field Theories、
の続編です。こちらの論文は、Physical Review Letters誌の注目論文(Editors’ Suggestion)に選ばれ、カブリIPMUからプレスリリースも出していただきました。
この前回の論文では重力理論で時空間の曲がりの弱い領域についてのみ考察しましたが、続編である今回の論文では、重力方程式のどのような解についても成り立つエネルギーの正値定理を導きました。
昨年のはじめから、1年半かけてやっと完成して嬉しいです。

この4月に立教大学の准教授に着任されたばかりの中山優さんと書いた論文です。
昨年の7月に中山さんと書いた論文、
Bulk Locality and Boundary Creating Operators、
の続きで、昨年の秋に、プリンストンの高等研究所に滞在していたころに準備を始めました。
ホログラフィー原理で、共形場の理論から、重力理論の局所的性質がどのように表れるのかを理解するのは、重要な問題です。昨年7月の論文では、重力理論の局所作用素が、共形場の理論の「クロスキャップの石橋状態」の重ね合わせで表現できることを示しました。
今回の論文では、この重ね合わせの仕方がどのように決まるのかを考察しました。

MITのポストドクトラル・フェローのニーマ・ラシュカリさん、高等研究所のポストドクトラル・フェローのジェニファー・リンさん、私のCaltechの大学院生でこれが博士論文の主題となったボグダン・ストイカさん、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学教授のマーク・ファン・ラームスドンクさんとの共著です。
重力を含む場の理論が与えられたときに、量子論として矛盾のない理論の低エネルギー有効理論として実現しているかどうかを判定する問題、いわゆる「沼地問題」を、情報理論のエントロピー不等式を使って考えました。
量子エントロピーは、量子力学の整合性から、様々な不等式を満たすこととが知られています。こうした不等式を、ホログラフィー原理を使って重力理論に翻訳し、重力理論についての条件を導こうというアイデアです。
今回の論文では、その中でも「相対エントロピーの正値性、単調増加性」が、重力理論では、準局所エネルギーの正値定理と解釈できることを示しました。エネルギーの正値定理は、重力理論の重要な性質と考えられているので、それがホログラフィー原理で対応する量子理論の整合性と結びついたのが面白いと思いました。
この論文は、一昨年の12月に書いた論文、
Locality of Gravitational Systems from Entanglement of Conformal Field Theories、
の続編です。こちらの論文は、Physical Review Letters誌の注目論文(Editors’ Suggestion)に選ばれ、カブリIPMUからプレスリリースも出していただきました。
この前回の論文では重力理論で時空間の曲がりの弱い領域についてのみ考察しましたが、続編である今回の論文では、重力方程式のどのような解についても成り立つエネルギーの正値定理を導きました。
昨年のはじめから、1年半かけてやっと完成して嬉しいです。


by PlanckScale
| 2016-05-09 01:17