2016年 10月 12日
アメリカ芸術科学アカデミーの入会式 |
ボストンで開かれたアメリカ芸術科学アカデミーの入会式に出席しました。アメリカ芸術科学アカデミーは、アメリカ独立戦争の最中の1780年に創設された米国最古の学会のひとつで、私は第236年度の会員になりました。
金曜日の夕方にボストンに到着し、ホテルに荷物を降ろしてから、ハーバード大学のサンダース・シアターでの前夜祭に行きました。
「人文芸術の祝祭」と題したイベントで、芸術や人文科学系の新会員による講演やパフォーマンスがありました。
サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館の館長のミハイル・ピオトロブスキーさんや、環境汚染が大きな問題になっている中国で自然を積極的に取り入れた持続可能な建築を推進している北京大学のコンジアン・ユゥさんの講演。また、詩の朗読やビオラの演奏などを楽しみました。
その後のレセプションでは、同じく今年度会員になったフィールズ賞受賞数学者のアンドレイ・オクンコフさん、フェルミ国立研究所の天体物理学者のジョシュア・フリーマンさん、UCLAの副学長もなさった素粒子論のロベルト・ペッチェイさんなどをはじめ、様々な分野の方々とご挨拶しました。土曜日の午前中はアカデミー会館でアカデミーの活動についてのお話を聞きました。講堂の周りの壁には、1780年の創立以来の会員の入会受諾書が掲げられており、オイラー、メンデレーエフ、ダーウィン、アインシュタインらの偉大な数学者や科学者の手紙が目を引きました。
右の写真は、アンドレイ・サハロフの入会受諾書です。サハロフは、旧ソ連での水爆の開発に指導的役割をし、また宇宙物理学の基礎的研究にも重要な貢献をした科学者でしたが、人権擁護活動でノーベル平和賞を受賞しました。アカデミー会員選出を感謝するとともに、アレクサンドル・ソルジェニーツィンと同期に会員になることを喜び、米国の人々と科学への尊敬の念を表すと同時に、しかし、米国のベトナム戦争での行為や国内問題(人種・人権問題のことでしょうか)について苦言を述べる思慮深い内容の手紙です。
昼食の後には、ハーバード大学のサンダース・シアターに移動して入会式。サンダース・シアターといえば、日本では、マイケル・サンデル教授の白熱授業『究極の選択』やイグノーベル賞授賞式で知られているかもしれません。左の写真は会場の様子です。アカデミーは、「数学と物理科学」、「生物科学」、「社会科学」、「人文芸術」、「公共、ビジネス、行政」の5つの部会にわかれていて、各々の部門の新会員の代表の講演の後、新会員が一人ずつ登壇して、〝Book of Members (会員名簿)″に署名する儀式がありました。
ジョージ・ワシントンも署名した歴史のある"Book of Members"に、私は漢字とローマ字で署名しました。
日曜日の午前中には、新会員の代表としてコロラド州立大学のテンプル・グランディンさんの講演がありました。講演のタイトルは、「異なる種類の心をもつ生徒を育てる」。グランディンさんは、ご自身が自閉症でありながら、動物学者、特に家畜を虐待しない施設の設計の専門家として大きな成功を収められ、その生涯を描いた映画はエミー賞を受賞しています。自閉症を持つ子供たちの能力を伸ばすにはどうしたらよいかというお話でした。ご自身の経験に基づいているので、説得力があります。アカデミーの会員には、神経生理学や心理学、教育学の専門家の先生も何人もいらっしゃるので、質疑の時間には、深い議論が繰り広げられました。
会場の行帰りのバスの中でも、詩人と科学哲学者と間で時間の概念についての議論がなされるなど、密度の濃い3日間でしたで、とても楽しみました。
by PlanckScale
| 2016-10-12 04:09









