2017年 07月 17日
最終講義 |
最終回のタイトルは「最終講義」。
25回の毎週連載で、原稿を落とすことなく、無事に役目を果たすことができてよかったです。毎回原稿を読んでくれて、ダメ出しをしてくれた (「話が難しすぎて、分かりません」とか) 妻に感謝します。
イスラエルでの Strings 2018 から帰った後、東京経由でパサデナにもどりました。
東京には午前7時に羽田空港に到着して、同日の午後11時に発つ、16時間の滞在でしたが、その間にNHKのテレビ番組の収録がありました。
しばらく Caltech を留守にしていたので、先々週の前半はパサデナで大学関係の業務を済ませて、後半はバージニア工科大学で開かれた String-Pheno 2018 で講演しました。
超弦理論から素粒子物理学や宇宙論の理論模型を導き出そうという試みを「String Phenomenology」と呼びますが、その分野で毎年開かれている国際会議です。
超弦理論からは、「Landscape」と呼ばれるほどの数多くの理論模型が導かれるので、その中で素粒子物理学や宇宙論への応用に適したものを選び出すのに、最近は機械学習も使われています。そのための特別セッションもありました。
バージニア工科大学からは、コロラド州のアスペンに向かいました。
アスペン物理学センターでは、会員総会と理事会があり、来年度の研究会やワークショップの選定、理事や役員の選出などが議論されました。理事長のアンディ・コーエンさんが出席できなかったので、所長の私が会員総会と理事会の両方の議長を務めました。
写真は、理事会の後のバーベキューの様子。事務長を21年続けられて、今年の5月に退職なさったジェーン・ケリーさんのために、以前所長をなさっていたピエール・ラモンさんがスピーチをなさっているところです。
理事会の合間には、共同研究者と議論をしたほか、LIGOによる重力波観測と既存の光学・赤外望遠鏡との連携に関するワークショップを覗いたりもしました。
アスペン音楽祭が開かれているので、コンラッド・タオさんのピアノ・リサイタル(モーツアルトと現代音楽)、ステファン・ジャキウさんのバイオリン・リサイタル(ブラームスのソナタ全曲)、サラ・チャンさんのバイオリン・コンサートにもいくことができ、気分転換にもなりました。
今週は、ニューヨークのサイモンズ・物理学・幾何学センターの研究会に来ています。月曜日に講演の予定です。
さて、『週刊ダイヤモンド』の連載「大人のための最先端理科」。7月22日号掲載の第26回記事では、初期宇宙に起きたとされる「インフレーション」の証拠をどのように探すのかという話をしました。
インフレーション理論は、宇宙の始まり直後の1兆×1兆×1兆分の1秒の間に、宇宙が10兆×10兆倍に膨張したという説です。例えば、水素原子の直径はおよそ100億分の1メートルで、1光年はおよそ1京メートルなので、10兆×10兆倍に膨張するということは、水素原子の直径を1光年まで引き伸ばすことになります。
この理論を使うと、ビッグバンの不思議な性質がうまく説明できます。しかし、科学の法則として認められるためには、予言が検証されないといけません。インフレーション理論の予言を理解するために、宇宙の急膨張の効果について考えてみました。
編集部の付けてくださったタイトルは、「宇宙創成の途方もない急膨張 インフレーションの証拠探し」
この『週刊ダイヤモンド』の記事は電子版でご覧いただくこともできます。
by PlanckScale
| 2017-07-17 03:03