2021年 03月 15日
『探究する精神』 |

昨年の1月12日に東京大学の安田講堂で講演会をする予定があり、東京出張のためロサンゼルス空港のラウンジで日本行きの飛行機を待っている時に、幻冬舎新書編集長の小木田順子さんからメールが届きました。
「研究者や教育者としての先生の来し方をベースに、基礎科学の意義についてお考えを述べていただけませんでしょうか」
というご提案でした。
同様の企画はこれまでいくつかの出版社からいただいていましたが、回顧録を書くのにはまだ早いと辞退していました。
しかし、本書の「はじめに」に書いた理由で、お引き受けすることにしました。
本文のイラストは私が描きましたが、各章の終わりのコラムのイラストは大高郁子さんにお願いしました。
大高さんは、私が以前に出版した『数学の言葉で世界を見たら』にも素敵なイラストを描いてくださいました。前回は線画でしたが、今回は水彩タッチです。

本書の初めには、トマス・アクイナスの言葉、
単に輝きを発するよりも照明する方が
より大いなることであるように、
単に瞑想するよりも瞑想の実りを他者に伝える方が
より大いなることである
より大いなることであるように、
単に瞑想するよりも瞑想の実りを他者に伝える方が
より大いなることである
を引用しました。この引用の理由は、本書の「あとがき」でご説明します。
大高さんに、この言葉に合うイラストをとお願いしたら、このような絵にしてくださいました。

この絵は本書の帯にも使われています。
発売は今月末ですが、アマゾンではすでに予約販売が始まっています。
以下に、本書の目次を掲載します。
『真理の探究』 目次
はじめに
第1部 知への旅の始まり
1 考える楽しさ
- 展望レストランから地球の大きさを測る
- 赤ちゃんが感じている「発見」の喜び
- 自由研究で試行錯誤を楽しむ
- 「自由書房」に放牧される
- ブルーバックスと万有百科大事典
- アルキメデスの原理の説明を自分で考える
- 「天から送られた手紙」を解読するという冒険
- 大学までの勉強の3つの目標
コラム 旅をともにしてきた「紙の本」たち

2 考え方を鍛える
- 受験対策で古代の哲学者たちに出会う
- デカルトが到達した真理探究の方法
- 納得のいかなかったカントの『純粋理性批判』
- 哲学と科学の交流から生まれる新しい世界観
- 研究の価値は何で決まるのか
- 物理学・数学の歴史から学んだこと
- 哲学と歴史はなぜ重要なのか
- ローマ皇帝から届いた言葉
- 受験参考書の名作たち
- 医学部でなく理学部、東大でなく京大
- 物理学とはそもそもどんな学問か
- 人生でいちばんよく勉強した四年間
- フロベニウスの定理と立ち食い蕎麦
- ファインマンに学んだ自由に発想するということ
- 『理論物理学教程』の研ぎ澄まされた美しさ
- 教科書でなく原論文を読む意義
- 教養の基礎としてのリベラルアーツ
- 文章の書き方は本多勝一に学んだ
- 英国運営の英会話教室で学んだこと
コラム 英語力向上には何が必要?
3 物理学者たちの栄光と苦悩
- 量子力学完成の瞬間 ― ハイゼンベルク『部分と全体』
- ナチス・ドイツにとどまる決意
- 「ウラン・クラブ」で原爆開発を指導
- 恩師ボーアとの別れ
- 戦争協力の葛藤 ― ダイソン『宇宙をかき乱すべきか』
- 「代数タイプ」と「幾何タイプ」
- 灰と瓦礫の東京から届いた声
- ゆううつだ、ゆううつだ ― 朝永振一郎「滞独日記」
- 「自由な楽園」での素晴らしき日々
- 理研・仁科の原爆研究
- 科学者としての好奇心、人としての倫理
- 科学の発見は善でも悪でもない
- 基礎科学という地図のない旅 ― 湯川秀樹『旅人』
- 概念を創造する ― シュレディンガー『生命とは何か』
コラム 概念は取り扱いに注意

第2部 武者修行の時代
- 新しい知を創造する
- 大学院でつけるべき三つの力
- 何度も勉強し直した「場の量子論」
- 「遅れてきた」という引け目
- 「ハリネズミ」と「キツネ」に学ぶ
- 「大栗君は曲がったことが大好き」
- 幸運の女神の前髪をつかむ
- 米国留学か東大の助手か
- 電子メール導入直前のテレックス
- 初の海外出張の宿は韓国大統領の別荘
- インドで失踪
- 幸運は準備された心に微笑む
- インドで後方宙返り
- プリンストンの高等研究所へ
- 博士号のない研究者たちがうろうろ
- 熾烈な競争の場か、自由な楽園か
- 博士論文とラマヌジャンの公式の30年
- 南部陽一郎さんの思い出
- 失敗だったシカゴ大学への転職
- バッハを聴いて「おもちゃの弦理論」を解く
- 普遍性を持つ成果「BCOV理論」
第3部 基礎科学を育てる
- 米国でのキャリアに再挑戦
- 二度目の超弦理論革命
- カリフォルニア工科大学に移籍
- 12年間考え続けたことの成果を出す
- 大学の運営にも参加
- 言葉の力を徹底的に鍛える米国の教育
- 膨大なエネルギーを費やし入試の合否を判定
- 33億円の研究資金調達に成功
- 奇跡の研究所・アスペン物理学センター
- 日本生まれ・日本育ちが米国物理学遺産の総裁に
- 東大の研究拠点構想に参画
- 「宇宙の数学」とは何か
- 「お茶の時間」から生まれる分野融合の成果
- IPMU誕生、そしてカブリの冠研究所に
- 自分が真剣に楽しめることは何か
- ミッションを忘れてはいけない
- コロナで加速する基礎科学の民主化
- 世界の動きに乗り遅れている日本
コラム 時間と体調の管理も大事な仕事
第4部 社会にとって基礎科学とは何か
- 東日本大震災が問い直した基礎科学の意義
- そもそも科学は天文学から始まった
- 2つの天文学が出合い、さらに発展
- 科学復興が始まった「12世紀ルネサンス」
- 大学・大学教授の誕生も12世紀
- キリスト教的世界観が受けた衝撃
- 理性とキリスト教を両立させたトマス・アクィナス
- 大学の死と再生
- 工学部の誕生、変化した大学の役割
- 目的合理性と価値合理性
- すぐ手の届く果実を収穫するには
- 役に立たない知識の有益さ
- 価値ある研究は探究心から生まれる
あとがき
参考文献

by PlanckScale
| 2021-03-15 10:14










