2014年 06月 27日
Strings 2014 と 「博士の愛した数式」 |

今回の会議には650名程度の登録がありました。私たちが京都で Strings 2003 を開催したときには400名程度、パリで開催された Strings 2004 が500名程度でこれまで最大と言われていたので、それを上回る参加者です。
さて、幻冬舎のウェブマガジンで連載している数学エッセイ『数学の言葉で世界を見たら』では、「空想の数」の後編を配信しました。
前回配信した前編では、複素数の考え方を説明しましたが、今回はそれを使って「オイラーの公式」を導きます。
オイラーの公式というと小川洋子さんの小説 『博士の愛した数式』で有名ですが、オイラーはこの公式を対数関数の性質を理解する過程でこの公式を発見しました。オイラーの師匠筋にあたるヨハン・ベルヌーイ(この連載第13回の「微積は積分から 前編」で登場したヤコブ・ベルヌーイの弟)と、微積分学の創始者のひとりであるライプニッツの間で、18世紀の初めに行われた指数関数についての論争に決着をつけるためだったのです。

17世紀の後半にニュートンやライプニッツが創始した微積分の方法を、数学や物理学の問題に応用してその力を知らしめたのがオイラーやベルヌーイでした。ベルヌーイ家は、宗教弾圧を逃れてスイスに移住し、数多くの著名な数学者を輩出しました。
右の写真は、バーゼル大学に残されている数学者の肖像画が集められている部屋で撮りました。
左上がオイラー。それから時計回りに、ヤコブ・ベルヌーイ、その弟でオイラーの師匠でもあったヨハン・ベルヌーイ、そして、ヨハンの息子のダニエル・ベルヌーイです。
三角関数と対数関数は、高校の数学で学ぶ2つの大切な関数ですが、その間には深い関係があります。それを明らかにするのが、「オイラーの公式」です。
小川洋子さんの小説『博士の愛した数式』で、未亡人とお手伝いさんのわだかまりを解くのにも、活躍した公式です。
三角関数は古代ギリシアの時代から研究されていた平面幾何の研究から生まれました。一方、指数関数は、ブラーエの天文学に触発されて、ネイピアが大きな数の計算を簡単化するために開発したものです。生まれも育ちも全く異なるこの2つの関数が、「空想の数」、つまり複素数を通じて関係していたというわけです。
『数学の言葉で世界を見たら』 連載の第16回の記事はこちらから。
⇒ 第16回 : 空想の数 後編
次回第17回の配信は7月12日(土曜日)の予定です。お楽しみに。


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by planckscale
| 2014-06-27 13:12
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