2018年 04月 05日
『素粒子論のランドスケープ2』出版 |
私が過去6年間に書いた解説記事などを、数学書房が一冊にまとめて下さった『素粒子論のランドスケープ2』が4月18日に出版になります。
2012年に出版された『素粒子論のランドスケープ』の続編になります。
重力理論や超弦理論について解説した記事の他に、2012年以降の基礎物理学の大きなニュースであった「ヒッグス粒子の発見」と「重力波の初観測」、その意義についての記事にもページを割きました。
雑誌『科学』や『日経サイエンス』、『数学セミナー』や『パリティ』などの理系雑誌のために書いた解説記事のほかに、講談社の『群像』や平凡社の『こころ』といった文芸誌、大学受験生のための情報誌 『大学ジャーナル』、また朝日新聞のWEBRONZAに掲載された記事もいくつか再録しています。
また、今回は対談や座談会の記事も多く掲載されています。
小説家の大江健三郎さん、建築家の原広司さん、評論家の三浦雅士さんとの座談会は、岩波書房の『世界』に掲載されたもの。
物理学者エドワード・ウィッテンさんとの座談会は、Kavli IPMU Newsに掲載された後、雑誌『数学セミナー』、アメリカ数学会誌、中国や台湾の数学誌にも転載されました。
プリンストンの高等研究所前所長のピーター・ゴダードさんと村山斉機構長と行った鼎談も、Kavli IPMU Newsに掲載された後、雑誌『数学セミナー』に転載されました。
また、メディアアーティスト落合陽一さんとキュレーターの四方幸子さんとの鼎談、理論物理学で博士号を取得された後ソムリエとしても活躍されている杉山明日香さんとの対談も掲載されています。
いろいろな場所に発表した記事を集めたので、読者の案内のためにも、各々の記事のはじめに,その記事を書いた背景を想い出して書いた紹介文をつけました。
また,本書の末尾には、56項目の専門用語について短い解説を書きました。
よろしければ、ご覧ください。
amazonのウェブサイトから、購入することもできます。
⇒ amazonウェブサイト
本書の「はじめに」の文章を転載します:
数学書房から、私の解説記事をまとめた『素粒子のランドスケープ』を出版していただいてから今年で5年になります。
この5年の間には、50年前に予言されたヒッグス粒子が発見され素粒子の標準模型が完成し、また100年前に予言された重力波が直接観測されて宇宙に新しい窓が開くなど、素粒子物理学や宇宙物理学では大きな進歩がありました。私の研究する超弦理論の研究でも、量子情報理論との深い関係が明らかになりつつあり、重力の謎の解明に新しい角度からの挑戦が始まってます。
こうした科学の発展を、広く一般の方々にお伝えするために、過去5年の間に、自然界の基本法則に関する3部作『重力とは何か』、『強い力と弱い力』、『大栗先生の超弦理論入門』、数学に関する『数学の言葉で世界を見たら』、仏教学者との対話『真理の探究』を上梓しました。日本科学未来館が制作し、私が監修としてお手伝いした科学映像作品『9次元からきた男』も、国際プラネタリウム協会の2016年最優秀教育作品賞に選ばれるなど、高い評価をいただいています。
このような科学アウトリーチの一環として、雑誌への寄稿や対談・座談会の企画をお引き受けしてきたところ、数学書房の横山伸さんから、これらの記事をまとめて出版しようというご提案を受けました。横山さんには、前回の『素粒子のランドスケープ』でもお世話になったので、続編になります。
読者の便宜のために、前回のように、星の数で記事の難易度を表すことにしました。前回は3段階でしたが、今回はより幅広い媒体に書いた一般向けの記事が多いので、2段階にしました。正確な定義はありませんが、☆は高校生でも気軽に読める記事、☆☆は理系に興味のある学生や社会人を想定したものです。星を割り振ってみると、☆のついた記事が19本、☆☆が5本で、大部分は気楽に読んでいただけると思います。異なる難易度の記事が混ぜてありますので、ちょっと難しいと思う記事にも挑戦してみてください。
各々の記事のはじめには、記事を書いた経緯などの解説をつけました。また、本書の末尾には専門用語の解説を書きましたので、ご参考になさってください。
前回の『素粒子のランドスケープ』に続き、本書のご提案をいただき、丁寧に編集をしてくださった横山伸さんに感謝します。記事の執筆の際に有益なコメントをいただいた皆さん、ここに全員の名前をあげることはできませんが、ありがとうございます。本書への記事の転載を許可してくださった出版社の皆さんにもお礼を申し上げます。
物理学は、自然界の現象の背後にある基本法則を見極め、それを使ってさらに広い範囲の現象を理解することも目的とする学問です。米国でロケットの開発と打ち上げを業務とする民間会社を経営しているイーロン・マスクのインタビューを読んでいたら、大学で物理学を専攻して学んだ「基本原理に立ち返って考える」方法がビジネスでも役に立ったという経験を話していました。東野圭吾の推理小説『ガリレオシリーズ』で、物理学者湯川学が難問を解決できるのも、基本原理に立ち返るからでしょう。本書の記事を読んで、基礎原理から考える大切さと楽しさを感じ取っていただけると幸いです。
2017年11月
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4月2日号掲載の第33回記事では、宇宙の人間原理の話題を取り上げました。
物理学の目標は、基本的な法則によって、現象を説明し、新しい予言を導くことです。しかし、宇宙の研究では、基本法則から導くことができない現象に出合うこともあります。
たとえば、太陽系内の惑星の間の距離は、基本原理からは説明できません。太陽系の形成の歴史の偶然に左右される部分もあるからです。宇宙の加速膨張の原因とされる暗黒エネルギーの量も、宇宙の発展の歴史の偶然で決まっているという考え方があり、これを解説しました。
編集部の付けてくださったタイトルは、「物理の法則で説明できない宇宙の“ちょうどいい”バランス 」。
この『週刊ダイヤモンド』の記事は電子版でご覧いただくこともできます。
2012年に出版された『素粒子論のランドスケープ』の続編になります。
重力理論や超弦理論について解説した記事の他に、2012年以降の基礎物理学の大きなニュースであった「ヒッグス粒子の発見」と「重力波の初観測」、その意義についての記事にもページを割きました。
雑誌『科学』や『日経サイエンス』、『数学セミナー』や『パリティ』などの理系雑誌のために書いた解説記事のほかに、講談社の『群像』や平凡社の『こころ』といった文芸誌、大学受験生のための情報誌 『大学ジャーナル』、また朝日新聞のWEBRONZAに掲載された記事もいくつか再録しています。
また、今回は対談や座談会の記事も多く掲載されています。
小説家の大江健三郎さん、建築家の原広司さん、評論家の三浦雅士さんとの座談会は、岩波書房の『世界』に掲載されたもの。
物理学者エドワード・ウィッテンさんとの座談会は、Kavli IPMU Newsに掲載された後、雑誌『数学セミナー』、アメリカ数学会誌、中国や台湾の数学誌にも転載されました。
プリンストンの高等研究所前所長のピーター・ゴダードさんと村山斉機構長と行った鼎談も、Kavli IPMU Newsに掲載された後、雑誌『数学セミナー』に転載されました。
また、メディアアーティスト落合陽一さんとキュレーターの四方幸子さんとの鼎談、理論物理学で博士号を取得された後ソムリエとしても活躍されている杉山明日香さんとの対談も掲載されています。
いろいろな場所に発表した記事を集めたので、読者の案内のためにも、各々の記事のはじめに,その記事を書いた背景を想い出して書いた紹介文をつけました。
また,本書の末尾には、56項目の専門用語について短い解説を書きました。
よろしければ、ご覧ください。
amazonのウェブサイトから、購入することもできます。
⇒ amazonウェブサイト
本書の「はじめに」の文章を転載します:
数学書房から、私の解説記事をまとめた『素粒子のランドスケープ』を出版していただいてから今年で5年になります。
この5年の間には、50年前に予言されたヒッグス粒子が発見され素粒子の標準模型が完成し、また100年前に予言された重力波が直接観測されて宇宙に新しい窓が開くなど、素粒子物理学や宇宙物理学では大きな進歩がありました。私の研究する超弦理論の研究でも、量子情報理論との深い関係が明らかになりつつあり、重力の謎の解明に新しい角度からの挑戦が始まってます。
こうした科学の発展を、広く一般の方々にお伝えするために、過去5年の間に、自然界の基本法則に関する3部作『重力とは何か』、『強い力と弱い力』、『大栗先生の超弦理論入門』、数学に関する『数学の言葉で世界を見たら』、仏教学者との対話『真理の探究』を上梓しました。日本科学未来館が制作し、私が監修としてお手伝いした科学映像作品『9次元からきた男』も、国際プラネタリウム協会の2016年最優秀教育作品賞に選ばれるなど、高い評価をいただいています。
このような科学アウトリーチの一環として、雑誌への寄稿や対談・座談会の企画をお引き受けしてきたところ、数学書房の横山伸さんから、これらの記事をまとめて出版しようというご提案を受けました。横山さんには、前回の『素粒子のランドスケープ』でもお世話になったので、続編になります。
読者の便宜のために、前回のように、星の数で記事の難易度を表すことにしました。前回は3段階でしたが、今回はより幅広い媒体に書いた一般向けの記事が多いので、2段階にしました。正確な定義はありませんが、☆は高校生でも気軽に読める記事、☆☆は理系に興味のある学生や社会人を想定したものです。星を割り振ってみると、☆のついた記事が19本、☆☆が5本で、大部分は気楽に読んでいただけると思います。異なる難易度の記事が混ぜてありますので、ちょっと難しいと思う記事にも挑戦してみてください。
各々の記事のはじめには、記事を書いた経緯などの解説をつけました。また、本書の末尾には専門用語の解説を書きましたので、ご参考になさってください。
前回の『素粒子のランドスケープ』に続き、本書のご提案をいただき、丁寧に編集をしてくださった横山伸さんに感謝します。記事の執筆の際に有益なコメントをいただいた皆さん、ここに全員の名前をあげることはできませんが、ありがとうございます。本書への記事の転載を許可してくださった出版社の皆さんにもお礼を申し上げます。
物理学は、自然界の現象の背後にある基本法則を見極め、それを使ってさらに広い範囲の現象を理解することも目的とする学問です。米国でロケットの開発と打ち上げを業務とする民間会社を経営しているイーロン・マスクのインタビューを読んでいたら、大学で物理学を専攻して学んだ「基本原理に立ち返って考える」方法がビジネスでも役に立ったという経験を話していました。東野圭吾の推理小説『ガリレオシリーズ』で、物理学者湯川学が難問を解決できるのも、基本原理に立ち返るからでしょう。本書の記事を読んで、基礎原理から考える大切さと楽しさを感じ取っていただけると幸いです。
2017年11月
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さて、『週刊ダイヤモンド』の連載「大人のための最先端理科」の記事も更新されたのでご報告します。
4月2日号掲載の第33回記事では、宇宙の人間原理の話題を取り上げました。
物理学の目標は、基本的な法則によって、現象を説明し、新しい予言を導くことです。しかし、宇宙の研究では、基本法則から導くことができない現象に出合うこともあります。
たとえば、太陽系内の惑星の間の距離は、基本原理からは説明できません。太陽系の形成の歴史の偶然に左右される部分もあるからです。宇宙の加速膨張の原因とされる暗黒エネルギーの量も、宇宙の発展の歴史の偶然で決まっているという考え方があり、これを解説しました。
編集部の付けてくださったタイトルは、「物理の法則で説明できない宇宙の“ちょうどいい”バランス 」。
この『週刊ダイヤモンド』の記事は電子版でご覧いただくこともできます。
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by PlanckScale
| 2018-04-05 13:29